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OpenAI騒動が示す「人類がAIと戦っている」現実 効果的利他主義者が去った後、何が起こるのか

東洋経済オンライン / 2023年12月21日 12時10分

OpenAIでのサム・アルトマンCEO追放騒ぎは、なぜ全世界のビジネス界からも大きな注目を集めたのか(写真:SeongJoon Cho/Bloomberg)

さる11月に起こったOpenAIでのサム・アルトマンCEO追放騒ぎは、テクノロジー界のみならず全世界のビジネス界からも大きな注目を集めた。

2022年11月に同社がリリースしたChatGPTはAIの最先端で何ができるのかを見せつけ、ここから未来が生まれると信じさせるに十分だったからだ。

ChatGPTに問いかけをすると、まるで頭脳明晰な人間のように詳細な答えを返す。作文も翻訳も難なくこなし、そのうち言葉で告げるだけで絵まで描き出すようになった。ビジネス界は先を争って生成AI技術を応用し、今や社会の隅々にまで浸透し始めていると言っても過言ではない。そこで起こったこの騒ぎ。人々は、これがAI開発の未来について何を物語るのかを見定めようとしたのだ。

起こるべくして起こった「解任劇」

結局アルトマンCEOは、追放された数日後に舞い戻るというどんでん返しを演じたわけだが、この動きによって舞台裏の一部が報道により明らかになった。そしてそれは、AI開発について必ずしも明るい未来が約束されているのではないと感じさせるものでもある。

今から思えば、騒ぎは起こるべくして起こったことだった。

2015年に創設されたOpenAIは、もともと人類のための安全なAI開発を行うNPOとしてスタートしている。イーロン・マスクやピーター・ティール、リード・ホフマンら、いわゆるペイパルの共同創設者の「ペイパル・ギャング」が創業資金面でのバックアップの中心だった。アルトマンは当初理事会メンバーとして関わっていたが、2019年にCEOに就任している。

この2019年はOpenAIが大きく転換した年だ。OpenAIというNPOの傘下に営利部門を設け、マイクロソフトから10億ドルの資金注入を受ける。創設当初は10人に満たず、2018年でも五十数人しかいなかった社員数は、この後倍々ゲームで増加していき、2022年には330人以上、そして2023年の追放騒ぎの時には770人と伝えられている。

大規模言語モデル(LLM)によるAI開発のために優れたAI研究者、開発者を集める必要があるというのが営利化の理由で、社員は他のスタートアップと同様に未公開株を得ている。同社が成功裡のうちにイグジットを果たせば、社員はミリオネア、ビリオネアになるという筋書きだ。

それでもOpenAIは、今回の騒ぎまでNPO的な価値観を保持していることをアピールしていた。営利部門は投資の100倍と利益に制限を設けていることもそうだが、理事会メンバーにはNPO創設時の価値観を掲げるメンバーが留まっていた。マイクロソフトから送られるメンバーがいないこともその証とされた。

投資畑出身者とNPO的価値観の「溝」

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