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「タマネギ切ると目に沁みる」意外と複雑な仕組み イグノーベル賞を受賞したおもしろすぎる研究

東洋経済オンライン / 2023年12月29日 18時0分

(写真:あっき~/PIXTA)

ノーベル賞のパロディとして創設され、世界中の独創性に富んださまざまな研究や発明の中からさらに「人々を笑わせ、同時に考えさせる研究」に贈られるのがイグノーベル賞です。私たちの日常で遭遇するぼんやりした「?」や滑稽な出来事、事件を科学的に解き明かして、見事イグノーベル賞を受賞した研究を紹介した書籍『ヘンな科学 “イグノーベル賞”研究40講』より一部抜粋・再構成してお届けします。

タマネギを切ると目に沁みる理由が意外と複雑だった

夕飯の準備の手伝いでタマネギのみじん切りを頼まれ、目に沁みてめげてしまう。多くの子どもが経験することだろう。タマネギを切ると涙が止まらなくなることは、小学生でも幼稚園児でも知っていることだが、意外にもなぜそのようなことが起こるかは2000年代初頭まで解明されていなかった。

というか、学術界は知ったつもりでいたが、当初思われていたほどシンプルな話ではないことが分かったのだ。謎を解明したのは、今井真介博士をはじめとするハウス食品の研究グループ。この発見を称えて2013年の化学賞が贈られた。

発見を一文でまとめてみよう。タマネギを切る時に飛び出る成分が、酵素1つに反応して催涙成分に変わると思われていたところ、実はもう一つの隠れた酵素の働きも重要で、2つの酵素反応を経ないと目に沁みない、ということだ。

植物は、ただボーッと生えているだけのように思えるかもしれない。でも、植物だってなるべく多くの子孫を残せるように、懸命に生きている。そのため、草食動物から身を守るべく様々な工夫をしている。

ニンニクやタマネギが持っている防御機能の一つが「アリイナーゼ」という酵素。動物に噛みちぎられたりして細胞がダメージを受けると、刺激性の物質を作り出す働きがある。

ハウス食品による研究が行われるまでは、タマネギに含まれる「PRENCSO」という化合物が時とともにこのアリイナーゼによって催涙成分に変化すると思われていた。

ところがこのPRENCSOを、タマネギ由来のアリイナーゼ溶液に混ぜると催涙成分ができたのに対し、ほぼ同じ成分のはずのニンニク由来アリイナーゼ溶液ではなぜかできなかった。ならばきっと、タマネギ由来のアリイナーゼ溶液には、ニンニク由来アリイナーゼにはない何かがあるのだろうと、研究チームは考えた。

そこで、タマネギ由来のアリイナーゼ溶液から見つかったのが「催涙成分合成酵素」だ。PRENCSOはアリイナーゼによって、一瞬だけ「プロペニルスルフェン酸」という物質に変化する。新しく見つかった催涙成分合成酵素が、そこからさらに、このプロペニルスルフェン酸を催涙成分へと変化させていることがわかった。

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