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大正製薬の「非上場化」投資家は納得できるのか 国内では最大規模となるMBOが抱える複数の問題

東洋経済オンライン / 2024年1月12日 18時0分

DCF法での株価算出において余剰現預金をいくらと見積もったかは、大正製薬HDに限らずほかのTOB案件でも開示資料では明らかにされないのがほとんどだ。「買取価格決定の申し立てをして、裁判所から株価算定書の開示命令を出してもらい、株価算定書を見て初めてわかる」(アメリカ系エンゲージメントファンド・RMBキャピタルの細水政和パートナー)という。

大正製薬HDのように現預金が潤沢である場合、余剰現預金を少なく見積もれば、算定株価を安くする効果がより絶大なものになる。

「MBO指針」をないがしろ

前出の細水氏が今回のMBOについて、最も問題視しているのは、「『改定MBO指針』を無視した不公正なMBOプロセスになっている」点だ。

2019年に改訂されたMBO指針(経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」)では、社外取締役で構成される特別委員会を設置し、かつその特別委員会が、会社側のFAとは別に独自のFAを雇い、株価の算定を行わせることを推奨している。

一般にMBOでは、非公開化後も現経営体制を維持するケースが大半だ。買収後もそのポストにとどまりたい取締役には、一般株主よりも買収者の利益を優先するインセンティブが働きやすい。だからこそ一般株主の利益を守るための「特別委員会」の設置を求めるのであり、その構成員は社外取締役を前提としている。

MBO指針では、「社外取締役は一般株主の利益が損なわれないよう業務執行者を監督することが使命である」と明記している。

社外取締役はともすると、支配株主、一般株主、債権者、社内の業務執行者など、どのステークホルダーからも中立であることが望ましいかのように誤解されがちだが、それは間違った認識で、一般株主の利益に立つことが使命だ。その点をはっきり明示した点が、MBO指針2019年改訂の最大のポイントだった。

その点を理解している社外取締役が特別委員会を構成し、なおかつその特別委員会が会社側のFAとは別に、MBO成立を条件とする成功報酬とは無縁のFAを独自に雇うことで公正な手続きになる、というのが改訂MBO指針での建て付けだ。

ところが大正製薬HDの特別委員会は、MBO指針を尊重せず、独自のFAを雇わずに取締役会が選任した大和証券の算定結果を追認している。大和証券をFAに選任した取締役会決議に、社長以下、上原一族など本件MBOに利害関係のある取締役が参加していたかどうかについて、公開買付届出書と意見表明報告書のどちらも見ても記載がない。

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