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大正製薬の「非上場化」投資家は納得できるのか 国内では最大規模となるMBOが抱える複数の問題

東洋経済オンライン / 2024年1月12日 18時0分

たとえ決議に参加していなかったとしても、特別委員会が独自にFAを雇い、大和証券の算定結果と比較するべきだろう。MBO指針はいわゆるソフトローであり法的拘束力はないものの、行儀がよい会社なら順守すべき規範である。これをあえて無視するのは極めて行儀が悪いといわざるをえない。

社外取締役がいない特別委員会

そもそも今回の特別委員会には社外取締役が1人も参加していない。2021年改訂のコーポレート・ガバナンスコード(東証と金融庁が策定)では、プライム市場上場会社は社外取締役を3分の1以上としているが、大正製薬HDは市場区分変更時にプライムよりも基準が緩いスタンダードを選択しており、社外取締役はもともと2人しかいなかった。

しかもそのうちの1人、植村裕之・三井住友海上火災保険元社長が2023年8月に死去したため、MBOの検討段階で社外取締役は國部毅・三井住友フィナンシャルグループ会長1人しかいなかった。三井住友銀行はMBOの資金約7000億円を融資することが予定されていて、明らかに買収者と利害関係がある。当然、特別委員会の委員にはふさわしくない。

それゆえか、特別委員会は社外監査役2人に外部有識者として元社外監査役1人が加わり、計3人という構成になっているのだが、2人の社外監査役のうち松尾眞弁護士は、「所属する法律事務所が大正製薬と取引があるけれど独立性は確保されている」という立場。

もう1人の社外監査役、青井忠四郎氏は丸井の創業者・青井忠治氏の四男で、大正製薬HDでの社外監査役歴はすでに9年目。非公開化後、買収のために設立したSPC(特別目的会社)に再出資する、公益財団法人上原美術館の評議員でもある。

元社外監査役の外部有識者は、2004年から5年間社外監査役を務めた佃孝之氏で、旧住友銀行で専務まで務めた人物だ。

旧住友銀行と大正製薬、そして上原家とは、銀行とその取引先のひと言では片付けられない、特別に親しい関係にある。

大正製薬は1972年に経営基盤強化を目的に、住友銀行、住友化学、住友商事の住友グループ3社と業務提携を締結。これが縁となり、「住銀の法皇」の異名をとった堀田庄三元頭取の次男・明氏を、大正製薬の中興の祖・上原正吉氏の孫娘・正子氏の婿として迎え入れた。

これ以降、現在に至るまで、旧住友銀行ならびに三井住友銀行の歴代の大物トップたちに、大正製薬の社外監査役、持ち株会社化以降は大正製薬HDの社外取締役のポストが提供され続けてきた。つまり大正製薬HDにとってみれば、旧住友銀行(三井住友フィナンシャルグループ)は企業関係においても親戚関係においても、特別すぎる間柄なのである。

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