5男で生まれた「藤原道長」想定外の出世の裏側 父親の「遅い出世」が、道長に有利に働いた
東洋経済オンライン / 2024年1月14日 7時50分
NHK大河ドラマ「光る君へ」がスタートして、平安時代にスポットライトがあたることになりそうだ。世界最古の長編物語の一つである『源氏物語』の作者として知られる、紫式部。誰もがその名を知りながらも、どんな人生を送ったかは意外と知られていない。紫式部が『源氏物語』を書くきっかけをつくったのが、藤原道長である。紫式部と藤原道長、そして2人を取り巻く人間関係はどのようなものだったのか。平安時代を生きる人々の暮らしや価値観なども合わせて、この連載で解説を行っていきたい。連載第2回目は、長男ではなかった藤原道長が出世できた背景を解説する。
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長男に生まれなかった偉人たち
歴史に名を刻んだ偉人の生涯を多く見ていると、実感することがある。それは「何がよい結果につながるのか、また、何が悪い結果につながるのかは、最後までわからない」ということだ。
とりわけ、自分の生まれというものは、努力でいかんともしがたいだけに、「我が身を恨む」ことにもなりやすい。しかし、一般的に不利だとされる環境が、あとあと大きな幸運を連れて来ることも珍しくはない。
幕末において活躍し、今でも多くの新たなファンを生み出している、土方歳三もそうだった。歳三は天保6(1835)年、武蔵国多摩郡石田村(現・東京都日野市石田)の豪農の家に、10人兄弟の末っ子として生まれた。
土方家の長男は「隼人」で世襲されている。長男から程遠い歳三は、家を継ぐこともできない。先行きがまったく見えないなか、歳三は武人に憧れて、家業の薬の行商を手伝いながら、剣の稽古に明け暮れた。
17歳頃には、家の庭に矢竹を植えながら、こんな宣言をしたと伝えられている。
「将来我武人となりて名を天下に掲げん(将来は立派な武人になる)」
歳三と運命をともにした近藤勇もまた長男ではなかった。そして歳三と同じように、農家の生まれにもかかわらず、やはり剣の修行に打ち込んでいる。
そんな2人が見つけた居場所が、京都で活動する幕府の警察組織ともいうべき、新選組である。新選組では、勇が局長を、歳三が副長を務めた。2人は京から全国へとその名を轟かせることとなる。
やがて新選組が、新政府軍に追い詰められていくと、歳三は改名しなければならなくなった。そのときに歳三が選んだのが「内藤隼人」。土方家の長男が名乗る「隼人」を仮名にしたのである。そこからはコンプレックスにも近い、跡取りとなる長男への憧れが見て取れる。
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