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宇都宮ライトレール、その人気で露呈した"欠陥" 何の対応もせず放置すると評価は下がり続ける

東洋経済オンライン / 2024年1月16日 6時30分

予想を大きく上回る人気ぶりの宇都宮ライトレールだが、利便性を損ねる問題もひそむ(写真:A.HARAD/PIXTA)

宇都宮ライトレールが2023年8月に開業した。黄色と黒の装いのスマートな低床車両が、宇都宮市の中心地に整備された噴水広場の水鏡に映り込み、また、芳賀町の緑濃い道路の側方軌道を軽快に走り抜ける。併用軌道区間はセンターリザベーション、地平や高架の新設軌道(自動車交通と分離した専用の走行空間)もあり海外のLRT都市を彷彿とさせる。

【写真を見る】宇都宮ライトレールは開業後、大人気だが利便性を損ねている課題もある?ほかに台湾・淡海LRTの様子。

利便性の低さとダイヤ乱れが期待を裏切る

11月末時点で宇都宮ライトレールの導入効果は、芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会によれば、利用者は当初予測を上回り、車の交通量は1割減り、バス利用者は増加したという。幸先の良い内容だ。

わが国にLRTが根付くかどうかは、宇都宮ライトレールの成否にかかっている。しかし、利用者が予測を上回ったという現状だけで成功したと考えるのは早計だ。それは、旧来の運賃収受方式を併用したことによる利便性の低さとダイヤ乱れ、立派な新設軌道にそぐわないのんびりした走りがLRTへの期待を裏切っているからだ。

成功のためには、①現金利用者も全ての扉で乗降、➁新設軌道区間の速度を向上、の2つが条件だ。そうすれば、LRT本来の機能と利便性が発揮され、LRTが理解されて根付く。

わが国はスマートな低床車両が走れば「LRT」と呼んできた。しかし、それだけでは旧来の路面電車と同じだ。利便性は旧来と変わらないため、「これがLRTなら、LRTは不要」との市民の声もある。

旧来の路面電車は利便性の低い少量・低速交通システムであり、第2次世界大戦後にアメリカ、カナダ、イギリス、フランスなどは見捨てた。しかし、路面電車は市街地での中量・短距離の面的輸送に適しており、中小都市では、都市交通の主役を担い得る。

スイス、ドイツなどでは、大戦後も路面電車を改善して活用してきた。必要不可欠の改善は運賃収受に「セルフ乗車」(乗務員は運賃収受にかかわらず、乗客のセルフサービスによる。わが国では「信用乗車」とも呼ばれた)方式の導入だった。最初にスイスのチューリッヒ市電が1966年に導入し、連接車を2組連結した全長42m、扉8つ、定員336人の路面電車がワンマン運転で走り出した。乗る時も降りる時も最寄りの扉で可能になるなど、利便性の高い中速中量交通システムに生まれ変わった。「セルフ乗車」は1960年代末までに西欧に普及した。

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