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「奨学金437万円」男性が40代でようやく得た天職 貧困家庭出身の彼が今、アフリカで働く理由

東洋経済オンライン / 2024年1月17日 12時0分

長内真人さん(仮名・57歳)は、生活能力がない父親の元で生まれ育ち、苦労の絶えない日常を送ってきた(写真はイメージです)(写真:jessie/PIXTA)

これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。

たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。

そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「うちは父親が縫製業を経営していましたが、プライドが高く、アルコール依存症で、人間関係がうまく築けないなど……。性格的な問題がいくつもあり、僕たちきょうだい3人はいつも生活に困っていました」

【写真】日本学生支援機構と裁判、「奨学金1200万円」36歳彼の願い

生活能力がない父親の元で生まれ育ち…

そう語るのは長内真人さん(仮名・57歳)。関西出身で、生活能力がない父親の元で生まれ育ったため、苦労の絶えない日常を送っていたという。同氏は続ける。

「70年代はまだ国全体が貧しかったため、『ほかの家庭もこんな生活なのかな?』と思っていたのですが、周りの暮らしぶりは良くなっていくのに、うちは一向に貧しいまま。年に数回、電気代の支払い遅延のため、電話を切られることがあったので、小中学生ぐらいまで町会長など、近所の有力者の家に母親と一緒に行くこともありました。

当時は何のために行っているのかわからなかったのですが、高校生くらいになってからようやく『あのとき、母は金を借りていたんだな』ということを理解しました」

5人家族だが、父親の事業はうまくいっていないため、長内家の世帯年収は180万円。「それでも、田舎だったのでなんとか暮らしていけた」とのことだが、長内さんは高校時代から奨学金を借りることになった。

「中学3年生のときに、職員室の担任に掃除が終わったという報告に行ったところ、『日本育英会(現・日本学生支援機構)』の資料を見つけたんです。『育英会』というぐらいだから仙台育英か奈良育英など、どこかの高校のパンフレットなのかと思いながら盗み読みしたところ、この世に奨学金という進学のために、お金を貸してもらえる制度があることを知りました」

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