台湾・民進党勝利の陰で逝去した民主革命家の人生 台湾民主化に命を懸けて闘った施明徳さんの人生
東洋経済オンライン / 2024年1月22日 8時0分
それに加えて、与党である民進党の腐敗やモラル低下は顕著になり、スキャンダルが続出した。成功した政策は見当たらず、当初は高く評価されたコロナ対策も、最後は感染の大拡大を引き起こした。
しばしば評価されるアジア初の同性婚の法制化も、実は民進党の功績ではなく、むしろ台湾全体レベルで行われた住民投票による結果という側面が強い。
こうした中で、今回の総統選挙では頼清徳氏が当選し、これから4年間、さらに民進党政権が続くことになった。頼清徳氏は勝利宣言で、「民主の勝利だ」と叫んだ。しかし得票率は40%だ。
事前の世論調査の多くで、有権者の6割が政権交代を望んでいると出ていたが、これがちょうど野党勢力の票を合わせた得票率になっている。野党の一本化失敗で転がり込んだ「4割総統」の誕生は、有権者が民進党の蔡英文政権に不合格点を付けたことを意味しないだろうか。
今回、若者の多くが新興勢力の民衆党の柯文哲氏を支持したが、これは民進党への批判票だと考えられている。
「民主の勝利」。日本のマスコミが総統選挙報道で喜んで引用したこの言葉だが、それは正しいのか。民進党が勝利すれば民主の勝利であり、野党が勝利すればそうではないのか。
なぜ今さら台湾で民主を叫ばなければならないのか。台湾は少なくとも1996年には総統直接選挙を実施し、形式的には民主制度を実現している。
現在の台湾の問題は、どのような民主主義にレベルアップさせるかであって、形式的な選挙民主主義からどう脱却するかだ。とくに2大政党である民進党と国民党の長期的な対立の弊害は、「悪闘」として批判されている。
世界に民主主義国はざらにあるが、その民主主義国でも問題はある。中国の一党制と比較して台湾は民主主義だと威張ったり、褒めたりすることは台湾にとって禁物だ。それが本当に民主主義なのか、問題はどこにあって、どう解決すべきなのか。
スローガンを復唱するだけでなく、細かな検証がなければ、台湾の衰退を加速させることになる。それはまさに、民主主義の腐敗を叫んだ施明徳さんが、陳水扁総統退任要求運動のときに呼びかけたことではないだろうか。
現在の民進党に真のリアリストはいるか
「民進党は変わった。昔は施明徳さんや許信良さん(施明徳さんの前後に民進党主席)たちのような尊敬できる人たちがいたのに、今は利益集団になってしまった」。これには、当時を知るほとんどの台湾の人が賛同する。
日本はどうか。反中感情に基づき、中国の対極として台湾を手放しに褒めそやす傾向が最近は強い。日本が台湾を重要なパートナーだと考えるのであれば、そんなことでは台湾に対する本当の理解、台湾との正常な関係構築を阻害することになる。
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