台湾と韓国で同時台頭する政界「第3極」に注目せよ 世界秩序の歴史転換に日本は鈍感だ
東洋経済オンライン / 2024年1月25日 10時0分
アメリカ大統領選など世界情勢を左右する選挙が目白押しの選挙イヤーの先陣を切って、2024年1月13日に行われた台湾総統選挙は、民主進歩党(民進党)の頼清徳候補(副総統)が中国国民党(国民党)と台湾民衆党(民衆党)候補の追い上げを振り切り勝利した。
勝利とはいえ野党分裂に乗じた「漁夫の利」の辛勝で、民衆党という「第3極」の躍進が辛勝の理由だ。同様に、「二大政党制」の韓国でも4月の総選挙を前に、保革2大政党に不満の層を取り込み「第3極」を目指す動きが表面化した。
台湾・韓国という日本の植民地支配を経験、戦後はアメリカの強い影響下に置かれた両者で、酷似した政治的変化がなぜ起きたのか。
台湾・民進党勝利は中国のせいではない
台湾総統選では頼氏の得票率が40.65%、2位の国民党の侯友宜新北市長が33.49%、3位の民衆党の柯文哲・前台北市長は26.46%だった。2野党の得票率を足せば50%を超え、頼氏は辛勝だったことがわかる。
野党は当初統一候補を出すことで合意したが失敗、選挙は3候補による三つ巴の争いになり、「第3極」の民衆党が大躍進した。
問題は勝因だ。頼氏は当選後の集会で「(台湾の有権者は)民主主義と権威主義の間で、民主主義を選択したことを示した」と、中国の選挙介入をはねのけたのが勝利と強調した。中国の選挙介入という政治要因が勝因と強調したのだ。
確かに中国は選挙介入した。投票直前の1月9日には農水産業や機械、自動車部品など関税優遇を中止する検討に入ったと発表。発動すれば対中輸出が4割近い台湾にとって打撃だ。有権者に向け「民進党に投票するな」というサインだろう。
では、介入は有権者の選択に影響を与えたのだろうか。中国は以前から軍事的威嚇に加え、パイナップルなど農水産物の禁輸措置に出ており、有権者は中国の制裁や威圧には「慣れっこ」なのだ。いまさら中国の干渉に有権者が反発し、頼氏に投票したのが主因とは考えにくい。
今回の争点は従来の対中関係ではなく、8年に及んだ民進党統治の是非を問う信任にあったと思う。柯氏は「独立や統一議論は無意味」と訴えた。総統選初戦の民衆党に26%の票が集まり、民進、国民の二大政党候補の票を食ったことがそれを示している。
中国は選挙結果を「民進党が島内(台湾)の主流民意を代表できないことを示した」と論評したが、的を射ている。「中国の脅威」を主要な争点にしてきた政策だけでは、民進党の支持は得られないことが今回の選挙に出た新変化だと思う。
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