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学生に「AIを積極的に使おう」と促す切実な理由 9割の学生がChatGPTを使っていなかった

東洋経済オンライン / 2024年1月29日 11時30分

いずれにしても、アイディアさえ発想できれば、あとはたちどころに作品ができあがります。このようにアイディアがすぐ形になる状況を、私はキャッチコピー的に「アイディア即プロダクト」と表現しています。

「アイディア即プロダクト」の経済

このアイディア即プロダクトが、経済に及ぼす影響は計り知れないものがあります。これまでも、電子書籍や画像、ソフトウェアなどのデジタル財はコピーにほぼコストがかかりませんでした。

このことを、経済学の用語では「限界費用ゼロ」と言います。「限界」というのは追加的という意味で、「限界費用」は追加的なコストということです。たとえば、自動車であれば1台作ったあと、2台目、3台目を追加して作るのにもコストがかかるため、限界費用はゼロではありません。それに対して、電子書籍は1冊作ったあと、2冊目、3冊目を追加して作る場合でもただコピーするだけです。そのため、限界費用がゼロになります。

限界費用に対して、生産量に関係なくかかるコストは「固定費用」と言います。ここでは、最初にかかるコストというぐらいにとらえておけばいいと思います。電子書籍であっても、作家に執筆依頼をすれば報酬の支払いが発生するため、固定費用がかかります。

ところが、アイディア即プロダクトの経済というのは、限界費用ばかりでなく固定費用もゼロに近くなります。なぜなら、作家に執筆を依頼する必要もなく、アイディアさえあればすぐ作品ができるからです。コストというと、お金が発生するものとしてとらえる人が多いとは思います。

ですが、労力も一種のコストであるため、費用ゼロは労力ゼロと置き換えてもらってもいいでしょう。今のところ、AIに生成させたいくつもの作品を人間が吟味して、試行錯誤を繰り返す必要があるため、労力が完全にゼロというわけではありません。

それでも、プロンプト・クリエイターの方も徐々に手慣れてきて素早く作れるようになり、AIの今後の進歩によって、ますます簡単に作品を生み出せるようになるはずです。したがって、究極的には「アイディア即プロダクトの経済=費用ゼロの経済」となるわけです。

ただし、費用がゼロに近くても、価格がゼロになるとは限りません。これからさらに、AIの生み出した画像が桁違いに増えてくれば、単に見栄えのよい画像を作ったというだけでは、売り物にならなくなるはずです。それでも、アイディアが秀でていたり、生成AIの生み出した作品を取捨選択する際の審美眼が優れていたりすれば、有料で売ることも可能でしょう。

クリエイターはますます食っていけなくなる

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