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長期で日本株が上昇する「ストーリー」はあるのか 「短中期」では日本株ブームは終わった可能性

東洋経済オンライン / 2024年2月10日 8時30分

短期も長期も、これらの背後にあるのは、日本ブームだ。この理由は、第1に、海外投資家が中国からの撤退により、アジアへの投資配分を日本へシフトさせているということ、第2に、東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ銘柄解消への圧力など、株主還元が加速する見通しが広まっていること、第3に、日本の個人投資家も株式投資に動き出した気配があるということ、これらによると言われている。

ただ、それ以外に、文化、社会的な日本ブーム、すしや観光などの日本ブームが日本のイメージを急激に良化させている面もあると言われている。大谷翔平ブームが関係あるかどうかは何とも言えないが。

一方、日本の国内機関投資家の動きは目立たない。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は「ネタ切れ」「タマ切れ」だ。パッシブ中心の運用となっているし、かつ日本株の上昇は、ポートフォリオ上、上限であるウェイト25%の超過をもたらすから、動くとすればむしろ売り方向だ。

また日本銀行も、新規のETF(上場投資信託)買いは、ほぼゼロであり、植田和男総裁も先日国会で見直しの可能性に言及した。ただし、「売るのはもっと先の話」とも述べた。そのほかの国内勢も、急な上昇に戸惑ったままついていけない感じで、もともとのホームバイアス(自国など身近で親しみのある資産への配分が過多になること)があるから、これ以上日本株をドラスティックに増やす余地はない。

これはアベノミクスによる異次元緩和により、日本株ブームとなった2013年と同じだ。今まで日本株を買わなかった投資家ほど、新しいストーリー(物語)に乗って、闇雲に日本株を買った。いままで日本と日本株をよく知っている投資家ほど、変化には懐疑的で、流れに乗り遅れた。円安と過剰流動性相場だから、実態に変わりはない、という見立てはおおむね正しかったが、それまでの「日経平均8000円台」というのが異常な安値だったから、価格水準の訂正のきっかけとしてのアベノミクスは効果を発揮した。

現在も、似た状況だ。日本株を買いたいと思う投資家たちの、買うためのエクスキューズ(言い訳)は、コーポレートガバナンスの改善、東証の圧力による株主還元の拡大であり、これは企業の事業モデルの変革でもイノベーションでもなく、株主への「見せ方」、プレゼンテーションの改善である。

つまり、見栄えが良くなっているだけであり、ブームに乗りやすいストーリーを見せているだけだ。それで流れは変わるのだから、株主や新規参入投資家にとっては素晴らしいのだが、中身が劇的に変わっているわけではない。もちろんまったく変化がない、と言っているわけではない。だが、中身の地道な改善や変化は、1998年のアジア通貨危機のときあたりから個別企業においてはずっと続いているわけで、何も2024年に新しいことが始まったわけではない。

株式市場はすべて需給で決まっている

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