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長期で日本株が上昇する「ストーリー」はあるのか 「短中期」では日本株ブームは終わった可能性

東洋経済オンライン / 2024年2月10日 8時30分

これが株式市場の本質だ。株式市場は、すべて需給で決まっている。これは行動ファイナンスの本質でもある。冒頭から「株式市場の見通しを中立的に」と言っておきながら、為替の水準もPER(株価収益率)も、成長性も何も言及せず、需給の話しかしていないのは、原始的で、シンプルで、洗練されていない議論だが、それが現実だからだ。

株式市場とは、理論や情報をぶつけ合うところではない。欲望をぶつけ合うところだ。株式を買いたいと思っている投資家、買いたい状況にある投資家、彼らが、投資する理由を見つけるためのものが、理論であり、ratio(比率)であり、ストーリーなのだ。

まさにストーリーという言葉が象徴するように、それは投資家が夢見る物語にすぎない。PBRが1倍割れしていれば、解散価値が株式時価総額を上回るから、株主は解散すれば儲かるはずなのに、解散しないということは、今後の企業収益価値がこれを上回っているからであり、これは理論的におかしい。だから、PBRは少なくとも1倍までは上昇する、つまり株価は上がらなければおかしいから、上がるはずだ、という理論に力を部分的に借りた物語を信じようとするだけだ。

しかし、信じる者は救われる。その物語を信じて買えば、株価は需給に基づいて上がる。上がるという物語は真実のストーリーとなり、その物語を信じる人々が増え、それは物語から事実、ストーリーがファクト(事実)に変わる。株式市場は、投資家の願望(または恐れ)が自己実現する仕組みになっている。

理論や株価モデルは、その理論の信者が増えれば、物語が現実となる。多くの人がPBR1倍割れは上がると信じれば、ビジネススクールに通い、「株価は企業価値で決まる」という教科書の理論的理想郷を信じれば、その楽園の物語が現実化する。

MBA(経営学修士)という布教活動が広まれば広まるほど、その「企業価値教」は正しさを増す。これがMBAの力であるが、実はこれよりも影響力の大きい「教祖」はアメリカの有力投資銀行であり、有力投資家である。

彼らが買えば上がり、スピードも速く、規模も大きいから、布教活動で語られた物語は、すぐに実現する。「これからはBRICsだ」と唱えた瞬間に(実はその前から)、ブラジル、ロシア、インド、中国の株価は上がる。「原油価格は1バレル=200ドルでもおかしくない」と言った瞬間に、原油は最後の暴騰を見せる。

「新たな物語が次々と語られ、暴落で忘却」の繰り返し

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