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「AI先進国」になれるチャンスが日本にも到来 本郷バレーがシリコンバレーを超える可能性

東洋経済オンライン / 2024年2月12日 19時30分

たとえば今、大学の世界ランキングで、北京にある清華大学は16位、北京大学は17位で、香港大学は31位です。日本のトップである東京大学は、そういった大学に抜かれて39位まで落ちています。特に清華大学の研究レベルは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)を超えていると言われています。

日本もある程度は中国を見習って、ほかの国と摩擦を起こさない程度に世界中からAI人材を呼び込むべきだと思います。日本から中国への人材流出は深刻な問題でしたが、これまでさして意識されることがなく、ほとんどなんの手も打たれませんでした。

私の関わる経済学の分野でいうと、数年前に一橋大学の経済学の先生が香港工科大学に移ったことが話題になりました。年収が600万円から1500万円と2倍以上にアップしたうえ、マンションをあてがわれ、福利厚生も充実しているというのです。 ところが現在では、習近平体制に対する警戒心から、中国に行くことを避ける人が増えています。いつ財産を取られたり、横暴な弾圧をされたりするかわからないという怖さがあるからです。

逆に、中国の金持ちが日本に逃げてきて、六本木辺りのタワーマンションの上層階に移り住むようなことすら起きています。そこに日本の勝機があると考えられます。つまり、日本は安心安全で、政府に財産を取られることもなければ、政府を批判して捕まることはない、そういうことを売りにして、世界から優れた人材を獲得すべきでしょう。

政府の姿勢にも変化の兆し

優れた研究者に対して破格の報酬を出すというのは、これまでの日本ができなかったことです。学者なんてどうせ道楽でやっているのだから、給料なんて安くていいという価値観すらあります。ある意味で正しいのかもしれませんが、それではほかの国に勝てません。政府の姿勢は、ようやく変わってきました。

文部科学省は、2024年度からAI分野の優れた若手研究者に年2000万円を支給します。目的は人材流出を防ぐことです。ですがそれは最低ラインで、さらに世界中から人材を呼び込むべきでしょう。

たとえば、年俸1億円で外国からトップクラスのAI研究者を10人ほど引き抜いて、東京大学の付近に住んでもらいます。それでもたった10億円しかかかりません。彼ら・彼女らに週に1回だけ大学で講義を行い、残りの時間は研究に専念してもらいます。もちろん研究アシスタントには大学院生を雇います。

こうするだけで、日本の学生のレベルが上がるだけでなく、世界中の学生が優れたAI研究者を目当てに日本に留学します。そのうえで、AI系ベンチャー企業の立ち上げ支援を強化すべきでしょう。元々東京大学の周辺は「本郷バレー」と呼ばれていて、AI系ベンチャーが集まっています。それを拡充させて、シリコンバレーを超えるような街へと本郷を発展させてはどうでしょうか?

ここでみなさんは「シリコンバレーを超えるのは絶対無理だろう」と考えたかもしれません。でも、それこそがデフレマインドなのです。1980年代の日本人なら、「やってやろうじゃん」と思ったはずです。

井上 智洋:駒澤大学経済学部准教授

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