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東南アジアで進む権威主義の深化と政治の王朝化 インドネシア大統領選でプラボウォ組が圧勝

東洋経済オンライン / 2024年2月20日 10時0分

材木を売って生計をたてる貧困家庭に生まれたジョコ氏は、大工を経て家具会社を立ち上げて成功した後、地元のスラカルタ市長、ジャカルタ特別州知事を経て国家元首に上り詰めた。

インドネシアでは長らく政治エリートや親族、富裕な取り巻き、軍高官らが政界を牛耳ってきたことから、「庶民派」ジョコ氏の登場は新鮮だった。

縁故主義と王朝化が進んでいる

ところが大統領も2期目になると、既成政治家同様のネポティズム(縁故主義)が急速に広がった。2020年の統一地方選にはギブラン氏が地盤のスラカルタ市長に、娘婿が北スマトラ州のメダン市長に出馬し当選した。

次男のカエサン氏はインドネシア連帯党の党首に就任し、次期統一地方選で西ジャワ州のデポック市長選に立候補すると表明している。新たな政治王朝の台頭である。

ギブラン氏の副大統領立候補は、正副大統領の立候補年齢を40歳以上とする選挙法の規定を満たしていなかった。ところが憲法裁判所は2023年10月、現職の地方首長などは40歳未満でも立候補可能との判断を示し、出馬が認められた。憲法裁判所の長官はジョコ氏の義弟だった。

インドネシアの大統領選を見ていて、気づくのは先に実施されたASEAN主要国の選挙やその後の体制との類似性だ。

スハルト元大統領の娘婿のプラボウォ氏はジョコ大統領の長男を副大統領候補に選んだが、フィリピンのボンボン・マルコス大統領もやはり20年余にわたり独裁体制を敷いた元大統領を父に持つ。タッグを組んで選挙戦を戦った副大統領は、強権で鳴らしたドゥテルテ前大統領の長女サラ氏だ。

ボンボン氏もTikTokをはじめとするSNSをフルに活用して「独裁者の息子」から「料理を愛する親しみやすい家庭人」へのイメージ転換に成功した。

インドネシアの若年層がスハルト独裁を知らないように、フィリピンではマルコス一家が「ピープルパワー」で追放された1986年の政変を知らない41歳以下の有権者が、前回選挙では56%を占めていた。

両国以上に子どもへの権力移譲が露骨だったのはカンボジアだ。2023年7月23日の総選挙で与党カンボジア人民党が125議席中120議席を得ると、3日後にフン・セン氏は長男のフン・マネット前陸軍司令官に政権を譲ると発表し、8月22日に38年ぶりの首相交代を親子の間で実現させた。

首相だけでなく内務大臣と国防大臣も世襲となり、各省庁をつかさどる大臣30人の過半数を人民党高級幹部の子どもや甥が占める「太子党」内閣が出現した。

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