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東南アジアで進む権威主義の深化と政治の王朝化 インドネシア大統領選でプラボウォ組が圧勝

東洋経済オンライン / 2024年2月20日 10時0分

世界で最も長く権力を握り続けたフン・セン氏は、退任後も人民党総裁として「院政」を敷く。ジョコ氏も政界に影響力の残したいと考えていることだろう。

タイでは、選挙とその後の政局の主役は相変わらずタクシン元首相だった。2008年に汚職防止法違反の罪で実刑判決を受け、国外逃亡を続けながらも2011年の総選挙では妹のインラック氏を党の顔に立てて圧勝した。

インラック氏は2014年のクーデターで首相の座を追われるが、2023年の選挙では次女のペートンタン氏を首相候補に据えて「2匹目のどじょう」を狙った。

タクシン元首相も釈放

プアタイはタクシン派政党としては初めて選挙で第1党の座を譲り渡したものの、公約を破って親軍政党と連立を組み、政権を奪取した。軍の政治関与を否定する前進党を第1党に押し上げた民意は完全に無視された。

2023年8月22日、タクシン氏はプライベートジェットで念願の帰国を果たした。もめにもめた連立交渉の末に、セター氏が首相に就任する数時間前だった。

警察にいったん身柄を拘束されたものの、高血圧など健康状態を理由に収監先の刑務所から警察病院の特別棟に移送された。禁錮10年の刑期は最高裁により8年に減刑され、さらに8月31日にはワチラロンコン国王に恩赦を申請、同日付でこれが認められ、禁錮1年に減刑された。

そして2024年2月18日、刑期を半年残して釈放された。結局、刑務所では一晩たりとも過ごすことはなかった。

望郷の念を募らせていたタクシン氏と既得権の死守をめざす軍や王党派の思惑が一致し、王党派は仇敵タクシン氏の帰国、恩赦を受け入れる代わりに、前進党を排除し、親軍政党を政権に参画させた。そうした妥協、あるいは密約が王党派とタクシン派との間で成立したとみられる。

現在の首相はセター氏だが、「次の顔」としてペートンタン氏が控え、ここでも遠くない将来に世襲が実現しそうだ。

マレーシアではアンワル首相が2023年1月、長女のヌルル前下院議員(42)を経済・財政担当の上級顧問に任命した。

アンワル氏は財務相を兼任しており、政府の経済運営の権限はアンワル家に集中することになった。政府にはびこる縁故主義を過去、批判してきたアンワル氏もまた同じ批判を浴びている。

王朝支配や政治世襲、縁故主義は、アジアのお家芸といえるほど各国で根ざしている。大統領制、議院内閣制、独裁と統治形態の違い、発展度合いに関係なくほとんどの国で見られる現象だ。

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