福永祐一、30歳を過ぎて「ゼロから学んだ」背景 執着のなさこそ、自分の最大の強みだった
東洋経済オンライン / 2024年3月6日 17時0分
さっそく藤原調教師の元に出向き、正直にこうお願いした。
「自分には馬術的な技術がまったくないので、イチから教えてください」
藤原調教師は厳しくも懐の大きな人で、そんな自分に「おう!」と一言。快く受け入れてくれた。藤原調教師はもともと星川薫厩舎で調教助手をしており、和男さんのお兄さんということもあって、その頃から何度も会話を交わす機会があった。
そんな藤原調教師と一緒に、自分が現役時代にダービー(2021年・シャフリヤール)を勝てたことは、最高にうれしかった。
自分が調教師試験に合格してからも、藤原厩舎を調教の拠点とさせてもらっているほか、一緒に牧場やセリに行きがてら、調教師として必要な知識を藤原調教師から学ばせてもらっている。ダービー馬のワグネリアンを手がけた友道康夫調教師と並び、自分が尊敬してやまないホースマンの一人だ。
藤原厩舎での修業の日々は、まずは「鐙上げ」から始まった。鐙上げとは、騎座(馬に騎乗した際の騎手の脚部。鞍に接している座骨、臀部、太もも、膝など人間と馬の接点)を安定させるために一番効果的なトレーニングで、要は鐙(騎乗時に足を乗せる馬具)に足を通さずに馬に乗ることをいう。
競馬学校で学ぶ基礎中の基礎だが、鐙上げからやらされたということは、すでにデビューして10年以上経っていたのに、自分はそれすらしっかりできていなかったということ。まさにゼロからのスタートだった。
GⅠをいくつも勝ち、年間100勝も達成した30過ぎのジョッキーが、調教師から「鐙を上げろ!」と指示を出され、鐙上げを毎朝やらされている。おそらく、そんな光景は前代未聞であったし、実際「なんで新人がやるようなことを今さらやってるの?」と、嘲笑の対象になっていることもわかっていた。
笑われて傷つくようなプライドは持っていない
それでも自分は藤原調教師の指示のもと、来る日も来る日も鐙を外した状態で馬に乗り続けた。外野の声などどうでもいい。笑いたければ笑えばいい、バカにしたければすればいいと思った。
そもそも、頑張っている人を笑うような人は好きではない。むしろ、嘲笑する人を見て、自分はまだまだ安泰だなと思っていた。なぜなら、必死に頑張っている人を見て笑えるということは、その人が頑張っていない証だから。頑張っている人の気持ちが少しでもわかる人は、嘲笑などするはずがないのだ。
デビュー当時からバカにされていた強みなのかもしれないが、自分にはこういうときに頭をもたげてくるプライドがない。何か目的があって頑張っているときに、それを周りから揶揄されたとしても、言いたい人には言わせておけばいいと受け流すことができる。
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