福永祐一、30歳を過ぎて「ゼロから学んだ」背景 執着のなさこそ、自分の最大の強みだった
東洋経済オンライン / 2024年3月6日 17時0分
コーチが必要となったところで、さて誰にお願いしようか──。そもそも騎手の世界には、ほかの多くの競技に存在する監督やコーチといった人がいないのだ。おかしなことに、そういった概念すらなかった。
その点に関しては、競馬界が変化する兆しは現時点でも見られないが、自分は「誰もやったことがない」という事実に不安よりも可能性を感じるタイプ。コーチをつけることにしても迷いは一切なかったが、前例がない以上、適任者を見つけるのは非常に難しかった。
最初に頭に浮かんだのは、日本を代表するトップジョッキーだった岡部(幸雄)さん。すでに引退されていたから、利害が反することにもなり得ない。異論を挟む余地のない名手であり、父親と同期であることにも縁を感じた。
しかし一方で迷いもあった。迷いの源は、岡部さんが元ジョッキーであること。そのときの自分は「劇的な変化」を求めていた。なぜなら、マイナーチェンジをしたくらいでは、トップを獲ることはできないと思ったからだ。
岡部さんに教えてもらえれば、確実にステップアップできるという確証があった一方で、劇的な化学変化を生むにはまったく違う業種の、それこそ目から鱗の発想が必要なのではないか、という漠然とした思いもあった。
せっかく挑戦するなら、目指すのはフルモデルチェンジ──。どうしてもその思いが消えなかった。
福永 祐一:元騎手、調教師
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