白い恋人に似てる?「白い針葉樹」作る会社の挑戦 摘果リンゴ使ったお菓子「りんご乙女」も販売
東洋経済オンライン / 2024年3月7日 13時0分
リンゴの生産過程で中心果を大きく育てるために切り落とされる「摘果リンゴ」を使ってつくる菓子商品「りんご乙女」だ。
薄くスライスした生のリンゴを生地に載せてプレス焼きで仕上げた薄焼きのクッキーで、新鮮なりんごの香りと甘酸っぱさが感じられる上品な風味が特徴だ。
1995年に発売した当初は、薄いクッキーの型に合う小さなサイズのリンゴを求め、山形の農家から市場に流通しない収穫期最後のリンゴを調達して使っていた。
お菓子に摘果リンゴの活用を検討
だが、商品が売れるようになると原料が不足するようになり、サイズの小さな摘果リンゴの活用を検討するようになった。
リンゴは1つの実を育てるために、少なくとも5つの幼果が切り落とされる。落ちた果実はそのまま畑に捨てられていた。松澤社長は、地元・飯田の摘果リンゴを活用できれば地場の土産商品として地域にも還元できると考えた。
ところが、課題が立ちはだかる。摘果リンゴを食用として利用するには、農薬の散布時期を遅らせるなど栽培体系を変える必要があり、提供する農家にとって病害虫の被害を招きかねないリスクを抱えていた。手立てを探る中、2007年、実証実験に名乗りをあげる強力な助っ人が現れた。
20軒以上あった飯田の農家の中で、“ファーストペンギン“となったのは、北沢農園の北沢章さん。JAみなみ信州で農業指導員として働く傍ら、実家はリンゴ農家を営んでいた。
「まさか摘果リンゴが活用できるなんて思ってもみない提案でした。しかもかなりの量が必要だという。リンゴ農家は秋にならないと1年分の売上が入らない。捨てるものがお金になれば、画期的な取り組みになる。ぜひやってみたいと思いました」と北沢さんは振り返る。
自身の果樹園を実験場にし、栽培方法の見直しを単独で引き受けた。工程の安全性を確かめながら防除基準をクリアさせ、徐々に賛同する農家を増やしていった。今では飯田地域を含む約50軒のリンゴ農家から、摘果リンゴを買い取る体制が整えられている。
注目すべきは、その買取価格だ。ジャムやジュースなどの加工用に使われるリンゴは1キロあたり20〜30円程度の相場で取引されるのに対し、マツザワは摘果リンゴを1キロあたり60円で購入している。しかも2023年からは資材高騰などを考慮し70円に引き上げ、昨年1年間で60トン超、425万円分を買い上げた。
かつて先代の父が山ごぼう漬けの端を集め土産品として命を吹き込んだのと同じように、松澤社長もまた、捨てられていた地域の素材を“財産”に変えた。
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