株価が暴落するかしないかは大した問題じゃない バブルで何を失ってしまったのか
東洋経済オンライン / 2024年3月9日 8時30分
後者はまったく正反対で、バブルはバブル膨張の最中にある程度判断が可能であり、膨張をさせないか、最小限に食い止めることが、金融バブルによる被害を実体経済に広げないために重要であり、事前の監視と抑止が重要だ、という考え方をとる。
前者が“消防署”で後者が“警察署”という比喩もある。火事を消すのが重要か、火事を起こさないのが重要か、ということである。
前者では、経済学者のミルトン・フリードマン氏が「1929年の大恐慌の被害があれほど大きくなったのは、金融バブル崩壊自体ではなく、中央銀行が金融緩和のあと、引き締めに転じたのが早すぎたからだ」と主張した。また、FRB(連邦準備制度理事会)元議長のベン・バーナンキ氏が行った大恐慌の研究においても、その系統の議論が強調された。
この見方が21世紀初頭に支持を増やしたのは、テックバブル(ITバブル)が2000年に崩壊したあとだ。このときはバブルが崩壊しても、事後の実体経済への影響が小さかったことから(アマゾンなどの「ドットコムバブル」による株価上昇はすさまじかったにもかかわらず)、「バブルが崩壊したあとの適切な処理さえ行えばよい」という主張が力を得た。
後者は、伝統的には見識のある主流派である。チャールズ・キンドルバーガー氏を始め、多くの歴史家や経済史家によって支持され、ジョン・ケネス・ガルブレイズ氏もこの考え方だった。
以前「やっぱり今は金融危機への『黄信号』が灯っている」(2023年8月19日配信)でも言及した、ハーバード大学の行動ファイナンスプロジェクトのリーダーであるロビン・グルーンウッド教授の研究でも、この対比がなされている。
一般的な常識からすれば、後者のBISの見解がどう考えても自然であり、妥当(当たり前)に思える。だが、金融業界ではバブルで儲けたい人々が圧倒的多数派だ。そのため、現実の政策マーケットでもFEDの見解が2008年にリーマンショックが起きる前までは主流だったことの背景にあったと思われる。
「銀行システムへの影響」がカギを握る
実際、2007年7月、アメリカのシティグループの最高経営責任者(CEO)だったチャック・プリンス氏は、金融業界の常識として、「音楽が鳴っているうちは、踊り続けなければならない」と述べた。リーマンショックを経て、現在では、かつてのFEDの見解をあからさまに主張する人はいなくなったが、金融業界の本音は今も変わっていない。
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