子育て支援めぐり「連合と野党だけ」猛反発のなぜ 騒動の主役は「年金破綻論全盛時と同じ顔ぶれ」
東洋経済オンライン / 2024年3月11日 9時0分
なぜ、こども・子育て支援の話と社会保険制度の間に連帯・分かち合いの仕組みとしてつながりがあるのかについては、次を参照してもらいたい。
「社会保険が子ども・子育てを支えるのは無理筋か」(2023年7月28日公開)
人というのは一様ではなく分布がある。こども・子育て支援と社会保険制度の存在をつなげて考えるのは屁理屈だと言う者もいる。人は一様ではないので、そのように見える人もいるだろう。
人は一様ではないということは、次のように説明すればわかってもらえるだろうか。次は、医療消費に見る社会保険と民間保険の違いを説明するために作られた図である。
この図をみて、ある人は「家計と所得の医療サービス支出の関係をみると、(中略)アメリカでは所得と医療サービスの相関は高い。所得に応じて国民は多様な医療サービスを購入していることを示唆する」という文章を書いていた。この文章をみて、なるほど、アメリカの医療制度のほうが日本よりもよいのかと思う人もいるだろう。
対して、私は同じ図をみて、以前、次のように書いたことがある。「このことから、皆保険下の日本では医療の平等消費が実現されているのに、国民全般を対象とした医療保障制度をもたないアメリカでは、医療が階層消費化している」。この文章をみて、なるほど、日本の医療制度のほうがアメリカよりもよいのかと思う人もいるかもしれない。
医療制度に関して、アメリカと日本への評価は、理念、価値判断の違いから生まれるものであり、互いに互いを説得して見解を変えてもらえるような話ではない。そして、医療消費が所得に応じて階層化する医療制度の具体的な設計と、所得に関係なくニーズに応じて医療が消費される平等消費医療制度の具体的な設計は、背後にある理念を反映して180度変わってしまう。制度というものは、そういうものである。
こども・子育て支援金の話も同じである。こども・子育て支援の財源を徴収する仕組みとして、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みとして社会保険制度を活用することにより、分かち合い・連帯を強化しようという支援金の理念を支持する人もいる。ところが、支援金は社会保障を機能劣化させるという人もいる。
与党が支援金の創設を含む子ども・子育て支援法の改正案を国会に提出した後の様子をみていると、野党は支援金に対してひたすら反対し続けているようである。予算委員会の中で、支援金について「一言で言えば、唾棄すべき最悪の制度で、速やかに撤廃すべき」と言う人もいる。そして団体としては、労働界の代表である連合は、こども未来戦略会議や支援金に関する大臣懇話会の中で、ひとり反対し続けていた。
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