いったい「異次元緩和」をする必要はあったのか? 「壮大な実験」の失敗ではっきりしたことは何か
東洋経済オンライン / 2024年3月23日 8時30分
これからは、景気と物価を見ながら利上げをしていくだけのことだ。つまり、本当に本当の「普通の」金融政策になったのだ。そして、負の遺産の処理は、それとは別に、金融緩和や引き締めのための金利の上げ下げとは別のものとして、景気や物価とは別の観点で、金融市場と向き合いながら、(おそらく淡々と)処理していくのだ。
この負債処理、言い換えれば、含み益がある株式と含み損が出始める国債という「負の遺産」に関する「ある種の不良(普通ではない異常状態という意味で)」資産処理、これを行っていくことになる。
これが完全に終了するまで、完全な正常化は果たせないという見方もある。だが、アメリカの中央銀行にあたるFEDも量的引き締めのペースを調節しながら、現在、「普通の」金融政策として、雇用と物価をにらみながら金利の上げ下げをしている。だから、21世紀の中央銀行は、「普通の」金融政策と同時に、つねにバランスシートポリシーも調節し続けるのが常態化するのかもしれない。それが、21世紀の「普通の」中央銀行の姿になるのかもしれない。
いずれにせよ、植田日銀は、一瞬でほとんどの正常化を完了してしまったのだ。大絶賛だ!
しかし、同時に衝撃的なサプライズでもある。そして、政策議論としては、深刻な大問題を提起しているのだ。それはどういうことか。
こんなに大胆に、一気に「三段跳び」をしてしまったのに、市場はまったく動かなかった。もちろん「事前のリークがあったから」という見方もあるが、そもそもリークされたときも「多少波立った」くらいだった。
なぜ「無風」という「事件」は起きたのか
ほぼ無風。これは、植田日銀の大成功であると同時に「金融市場とは何なんだ?」という疑問が生じる「無風」という「事件」である。金融市場がこの2年騒いできたこと、とくに「黒田(東彦)日銀」の末期、YCCをネタに締め上げ続け、為替で仕掛け続けたのは何だったのか。
それは、金融市場で仕掛けたがる奴らが日銀ネタに飽きてしまったから、なのだ。つまり、日銀ネタで仕掛けるのは賞味期限切れで、盛り上がらないから、誰もついてこない。ついて来なければ、乱高下が起きなければ、仕掛けても儲からない、だからやめてしまったのだ。
むしろ、この1年は日本大ブームで、日本を何かの理由にかこつけて、とにかく「買い」たかったのだ。だから今回も、日本を売るという方向では材料にしづらいから、日本株を暴騰させてみたのだ。
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