いったい「異次元緩和」をする必要はあったのか? 「壮大な実験」の失敗ではっきりしたことは何か
東洋経済オンライン / 2024年3月23日 8時30分
34年ぶりに日経平均株価がバブル期を超え、証券関係者は「生きているうちにこの日が来るとは思わなかった」と感激して泣きながらクス玉を割り、エコノミストや中央銀行関係者は「日銀の悲願だったインフレ率2%が実現した」と、なぜかインフレを起こすことが悲願で、すべてのことに優先するかのような議論を行い、「日本経済の最大の問題であるデフレが解決した、これでやっと次に進める」などと言っている。
狂っているのか。
インフレはそもそもよいことではない。物価が安定していることが重要なのだ。第2に、インフレ率が高まったのは、金融政策とはまったく無関係に、新型コロナウイルスと、ロシアのウクライナ侵略で起きたサプライショック、および構造的な人手不足によるものだ。
そもそも、金融政策による解決というアプローチそのものが、根本的に間違っており、しかも、それは壮大な実験をする前からわかっていたことだった。黒田氏の講演がまさに示しているとおり、需要不足から生じる問題ではなく供給側の構造問題だと、わかる人にはわかっていたのである。
第3に、結局、日本が闘ってきた(といわれる)デフレとは何だったのか。インフレが問題で、物価高対策を政治家が躍起になってやっているのに、植田総裁が今はデフレではなくインフレだと言っているのに、「まだデフレ脱却とは言えない」などと言っている。では、政治家たちが言っている「デフレ」とは何なのか。はっきりさせる必要がある。
これは「デフレマインド」という言葉のほうが近い。かつ、デフレマインドとは消費者の貧乏人根性で、1円値上げしたらライバルメーカーや隣のスーパーに移るという行動習慣である。
また、それを過度に恐れる、自社の製品の価値と価格戦略に自信を持てない企業の問題であり、赤信号みんなで渡れば怖くないと揶揄される、日本の悪い同調主義が根底にある。コスト高だから、みんな価格を上げざるをえないが、このときどさくさにまぎれて、コストと無関係に、あるいはこれまで我慢していて値上げができなかった分をこの際一気に上げてしまっている。
賃金も同じだ。何かみんなで上げるムードだから、「よし、大盤振る舞いだ。うちはライバルよりもっと上げるぞ」などとやっている。「物価と賃金の好循環」などという概念は真っ赤なうそであり、上げようと思えばもっと前から上げられたのに、雰囲気に流されて上げているだけである。
日本社会の構造的な行動原理の欠陥問題が明らかに
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