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ギャンブル依存「いつか勝つ」が難しい数学的根拠 負け続けた結果、一気に挽回を目指しても…

東洋経済オンライン / 2024年3月26日 11時50分

(写真:kapinon/PIXTA)

ドジャースの大谷翔平選手の通訳を務めた水原一平氏が解雇されたニュースは、野球が大好きな筆者は衝撃をもって受け止めた。スポーツ専門チャンネルのESPNの報道によると、水原氏は自身が「ギャンブル依存症」であることを明かしたという。

押さえなくてはならないことは、ギャンブルにおいて胴元は大きく儲けるが、参加者の期待値は損になることである。本稿では、ギャンブルの危険性について数学の視点から訴えたい。

ギャンブル「必勝法」のカラクリ

賭博にはさまざまな種類があるが、分かり易くルーレットで説明すると、ルーレットには1から36までの数字が並ぶ他に、0と00がある。1から36の半分は赤で、半分は黒である。赤(黒)にチップを1枚賭けて赤(黒)が出ればチップを2枚もらえる。掛けた色ではない色や0や00が出れば賭けたチップを失うのである。それゆえ、期待値は損になる。

賭博に引き込みたい胴元周辺がよく囁く“必勝法”に、「マーチンゲール法」というものがある。説明を簡単にするために、0や00があるルーレットではない「コインの表裏」などを当てる単純な賭けとして説明しよう。

たとえば最初は1万円を賭ける。それに負けたら2万円を賭ける。また負けたら次は4万円を賭ける。そのように負けたときは次に倍の金額を賭けることにすれば、いつかは勝って、勝ったときにはトータル1万円の利益である。たとえば、1回目から3回目までは負けて4回目に勝ったならば、1万円、2万円、4万円がマイナスで8万円がプラスなので、トータルで1万円を得ることになる。そして勝ったときの次は、再び1万円の賭けから始める方法である。

上の説明をすると、「これは必勝法ではないか」と思う人が多いのである。中には、「場所代も払うことを考えると、結局はマイナスになるだろう」、と言う人もいる。

「いつかは勝って」は難しい理由

この考え方の問題点は、「いつかは勝って」の部分にある。「n回目までに必ず勝つという自然数(正の整数)nはあるのか」と自問すればすぐに分かるように、nをいくら大きい自然数としても、そのような自然数はない。一方、どんな資産家でも賭けに使えるお金には上限があり、すなわち連続して負けられる回数には最大の自然数があるので、その回数を超えないうちに勝たなくては、マーチンゲール法の考え方は成立しないのである。

上記の文は拙著『新体系・大学数学 入門の教科書(上)』(講談社ブルーバックス)からの引用であるが、根本には論理的に厳格に述べる文では「すべて」と「ある」の用語をきちんと使う必要があることを示し、極限の概念を展開しているのである。

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