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日米の心理学者が語る「内なる声」の驚異の力 アスリートも実践する「自分と距離を置く」方法

東洋経済オンライン / 2024年3月28日 10時0分

そして、自分は何者なのかを考えるようになり、アメリカで心理学を学び始めます。

クロス:それが第2の情熱になったのですね。

田中:はい。当時、私のチャッターは鳴りを潜め、セルフトークは機能しなくなっていました。引退後は、もう自分に話しかけたくありませんでした。自分の本音を知りたくないからです。

やがて、スポーツ心理学を学ぶ過程でセルフトークについて知り、話そうと努めるようになりました。

内なる声を味方につける

田中:私の場合、チャッターは解決策を見つけ出す大きな助けになります。だからこそ自分と対話する必要があるのです。

クロス:心を静めたいと思うときと場所が絶対にあると思います。例えば、野球なら、9回2アウトのピッチャーマウンドにいるというような場合です。

そのときに助けになるツールが、本書に紹介している「儀式」です。一方、「内省」を求めるときもあります。プレッシャーが強いときは、自己分析したくないものですが、逆に、試合の前後にはそうしたいのではないでしょうか。

田中:はい、そうです。自己分析をせざるを得ません。

クロス:つまり、状況に応じて異なるアプローチが必要なのです。あるリリーフ投手は、状況に応じて3つのツールを持っています。

ブルペンで「2イニング後に登板だ。準備せよ」と言われたとき、「この回の後半で登板だ」と言われて準備をする時間が少ないとき、そして「今すぐ登板だ」というときです。それぞれの状況に応じて自分に効くツールを用意しているのです。

これから起こり得るシナリオを想定する、「実行意図」と呼ばれるものです。

田中:内なる声を、自分の敵ではなく、味方につけるわけですよね。

クロス:それが望ましい状態です。内なる声は価値ある資産である一方、人類最大の脆弱性でもあります。しかし、内なる声は、素晴らしいことをなすように進化してきたわけです。

クロス:デビル・ミヤコが主役なら、乗っ取られてしまいますが、私は、内なる声を取り除くのではなく、より良く考えるために、内なる声が必要なことをできるように解放し、味方につけたいのです。

田中:世界情勢が緊迫している今、子どもたちの未来を考えると難しい状況だと感じますが、本書を読んで希望も持ちました。

クロス:今の世界は情報にあふれていて、せっかくの知識を本当に人のためになるように生かし切れていない状況です。私は科学者ですから、チャッターに関して最高水準の科学的裏付けがあることが非常に重要で、それが当然の責任だと考えています。

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