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台湾地震、「鉄道のスピード復旧」なぜできたのか AIで落石検知、「双単線」方式活用し暫定運行

東洋経済オンライン / 2024年4月12日 6時30分

地震発生後、いち早く復旧した鉄道を用いて被災地へ物資を輸送する様子(写真:国営台湾鉄路)

4月3日朝に発生した台湾東部の沖合を震源とするM7.7の大地震は、東部に大きな被害をもたらし、台北の通勤ラッシュも直撃した。MRT(都市鉄道)の橋桁が大きく揺れる姿や列車が立ち往生する様子が即座にネット上で出回り、筆者の職場でも子どもを学校に送り届けられず直接連れてきたり、在宅勤務に切り替える同僚がいたりするなど、多少なりとも混乱が見られた。

【写真でわかる】鉄道は発生翌日には復旧、どのような工夫があったのか。2021年の「太魯閣号」事故跡地に設置された落石検知警告システムなど

また、翌日から「清明節」と呼ばれる大型連休を迎えるタイミングだったため、地震の影響による交通機関の不通が東部への帰省の足を直撃。発生当日は、震源地に近い花蓮や台東方面への特急列車は全て運休、道路も橋桁が滑落し通行止めとなるなど北部から東部へのアクセスが断たれた。

しかし、驚くべきことに鉄道は翌4日から通常運転を再開した。道路は連休最終日の7日まで復旧に時間がかかった中、鉄道がスピード復旧した背景には何があったのだろうか。観光への影響も含め、地震発生後の現地事情を紹介する。

落石との衝突防いだAIシステム

国営台湾鉄路が運行する鉄道は今回の地震で、台北と宜蘭や花蓮、台東といった東部の主要都市を結ぶ在来線の東部幹線の2カ所で架線の垂下、1カ所で落石が発生した。また、1駅でホームの建屋が損傷を受けるなどした。

衝突事故の危険がある落石は、検知できなければ大惨事になりかねない。これを防いでいるのが近年整備された落石検知警告システムだ。AI(人工知能)で落石などの異常物を検知し、付近2km圏内の列車を時速30kmに減速、または停止させる。

落石検知警告システムは2021年、線路内に工事中のトレーラーが落下し列車が衝突した太魯閣(タロコ)号脱線事故の反省や、平渓線で多発していた落石事故に備え整備された装置で、2022年度末までに土石流や落石の可能性が高い26カ所に整備された。

地震発生時は、太魯閣402次(402号)が落石の現場近くを走行していたが、検知システムによって衝突を防いだ。過去には線路に侵入した猿までも感知してしまい話題となった装置であるが、今回は本領を発揮することとなった。

こうして、大きな列車事故もなく線路は地震発生翌日の4日未明に復旧。道路が復旧しない中、通常運転に加えて花蓮へ向かう快速列車(区間快)を5往復増発し、物資を運んだ。定時運行率も会社発表で83%を維持し、被災地への輸送を支えた。

陸・海・空の交通総出で代替輸送

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