栗山英樹が「久米宏からのダメ出し」で学んだ事 「きれいにしゃべったところで、伝わらない」
東洋経済オンライン / 2024年4月13日 15時0分
WBCで世界一になったお祝いとして、ファイターズの本社が贈ってくれた「芝刈り機」に乗る栗山英樹さん。北海道の栗山町に造った少年野球場「栗の樹ファーム」は天然芝のため手入れが欠かせない(撮影:塚田亮平)
2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、監督として侍ジャパンを世界一へと導いた栗山英樹さん。大谷翔平選手や侍戦士たちが絶対的な信頼を寄せる栗山さんですが、高いコミュニケーション力の背景には、キャスター時代の地道な鍛錬があったといいます。栗山さんの「伝える力」の源について、書籍『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』から、一部引用、再編集してお届けします。
キャスター時代に鍛えられた「伝える力」
思わぬものが、思わぬところで生きてくる。すべては今につながってくる。とにかく一人前になりたいと30歳で転身したキャスターでしたが、この報道の世界で、後の監督の仕事にも生きてくる、多くの学びを得たのでした。
初めての仕事となった『ニュースステーション』では、当時のとても優秀なディレクターから厳しい指摘を受けました。
誰かのインタビューに向かい、話を聞く。普通のキャスターなら、ここまでで仕事は終わりです。しかし、経験がなかった僕の場合は違いました。ディレクターと一緒に局に戻り、録画したビデオを見せられるのです。映像では、僕が質問し、選手が答えている。ところが、肝の質問になると、選手は答えにくくて、黙ってしまう。ディレクターは言いました。
「ここですよ。ここで栗山さんが、『あのさ、これはさ』と言葉を出してしまうでしょう。そうすると、ますます相手はしゃべりにくくなるんですよ。言葉が返ってこなくても、この間を我慢できないのは、ありえない」
ありがたい時代だったのだと思います。そんなことまで、ディレクターが手取り足取り、教えてくれたのです。振り返れば僕は、本当に愛情を持った人たちに出会えていたのだと思います。
「野球をやっていたから、出てもらっているわけじゃない」
当時の『ニュースステーション』のメインキャスターは、久米宏さんでした。誰もが知っている日本一のキャスターです。番組に出演して1年ほど経ったとき、食事に誘われたのでした。
あまり出演者と食事に行ったりしない久米さんでしたが、共演していたキャスターの小宮悦子さんを誘い、さらにはディレクターもやってきました。
久米さんは、ズバッと言いました。
「栗山くん、言ってもいいかな」
「はい」
「野球をやっていたから、出てもらっているわけじゃないんだ。プロとして、キャスターをしてもらわないといけない」
「はい」
「人間がテレビを観て、どの瞬間に集中するか、わかってる?」
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