80年代、東大駒場に流れていた自由な風の正体 異色の教養シリーズ「欲望の資本主義」の原点
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 10時30分
丸山:それは単に僕の目的に向かって直線的には進めないアマノジャクな癖と、怖いもの知らずの妄想家ゆえからかもしれません(笑)。「欲望の資本主義」にしても、資本主義が主題であるという以前に、自分が何を欲しているのかわからなくなっているのが現代の人間だとしたら、という着想から始まっていますし。
大学時代も就職活動を前に、新卒一括採用、年功序列、終身雇用などを特徴とする日本的な大企業の論理の中で勤め上げられるか不安を感じていたようなタイプで、「いい学校」「いい会社」というルートに乗っていくことを目指す人生が正解と見做される世の中への違和感があったんですね。
メディアへの志望も、そうした意識が背景にありました。新人でも小さなコーナーの演出をしたり、わずかなスペースでも自分で記事が書けたりと、なんとか表現の試行錯誤をする場を持てるのではないかという期待からの志望でした。自らの問題意識と社会の課題との間に連続性を見出せる場を探し続けていました。今にして思えば、メディアに限らずさまざまな世界にそうした場もあったのかもしれませんが、いずれにせよ、仕事を通して感じ考え、物事の本質に迫る喜びをエネルギーにしたかったのです。
入局の際の同期の自己紹介の場で、多くが「NHK特集」や「大河ドラマ」などの志望を口にする中、「ラジオ第2」をあげたのは僕だけだった記憶があります。1980年代の「ラジオ第2」には、さまざまな分野の最前線を走る人々にフラットに話を聴くスタイルの「教養番組」があったのです。
当時「ニューアカデミズムの旗手」と謳われた浅田彰さんや、『朝日ジャーナル』の名物編集長でもあったジャーナリストの筑紫哲也さんといった各ジャンルで時代と対峙する問題意識を持つ人々にディレクター自らがインタビュアーとなって話してもらう、そんなシンプルな番組を放送していて、そんな仕事のスタイルに憧れていました。
収録機を担いで一人インタビューに出かけ、ハサミ片手にテープをつぎはぎし自分で編集し、放送にこぎつける。そうしたシンプルな過程こそリアリティを感じられるというか、制作の過程で考えることができる日々に勝手に可能性を感じていた就活生でした。結果的には、ラジオは新人時代に少しだけ経験し、基本テレビ中心の日々となりましたが、今でも僕が着想する番組企画は実はラジオ的だなと思うことがよくあります。
ジャンルを横断する思考で自らの「フレーム」を作る
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