機能性食品は「根拠の質が低い」とわかるのが長所 健康食品業界38年の識者が指摘「制度の功罪」
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 7時50分
機能性表示食品制度が発足して10年目。小林製薬の「紅麹」を含むサプリメントによる健康被害問題を受けて、消費者庁は制度見直しを進めている。
健康食品ビジネスのコンサルティングや勉強会を行うグローバルニュートリショングループは、これまで300件超の「売れる」機能性表示食品の商品開発や届け出のサポートを行ってきた。紅麹問題で揺れる機能性表示食品制度が残してきた功罪は何か。これからどう変わっていくのか。制度に詳しい同社の武田猛代表に聞いた。
安倍元首相の狙い
――小林製薬の「紅麹」問題は、機能性表示食品制度にどのような影響をもたらしていますか。
今回の件で、機能性表示食品業界は消費者庁や厚生労働省からの信用を失ってしまったのではないか。この制度のガイドラインには、健康被害情報が出たらすぐに報告しなさいと書いてある。機能性表示食品制度を利用するにあたっては行政とのコミュニケーションが非常に重要で、信頼関係があれば何かあった時にサポートしてくれる。だから、基本的に医師から連絡があれば直ちに保健所や消費者庁へ相談するべき。
だが小林製薬は、健康被害の情報が入った時点でジャッジできなかった、もしくはしなかった。これで行政との信頼関係を失ってしまったと思う。
――そもそも機能性表示食品にはどんな役割がありますか。
これは安倍晋三元首相が経済成長施策の一環として創設した制度。以前からトクホ(特定保健用食品)はあったが、トクホの許可を得るにはお金と時間がかかり、大手企業でないと利用が難しい。中小零細企業の参入を容易にするため、企業が責任を持って機能を表示できるアメリカのダイエタリーサプリメント制度を参考に設計したのが機能性表示食品制度だ。
3月22日時点の参入事業者数はトクホで132社だが、機能性表示食品は1709社(グローバルニュートリショングループ調査)。安倍元首相の当初の狙いは実現しつつある。
機能性表示食品の普及により、自分に必要ない商品を買う人は減っていると思う。例えば血糖値に対する機能が書いてあれば、関係のない人は買わない。いわゆる「健康食品」しかなかった時代には、「何にでも効きます」「これを飲んでおけば安心」というイメージの商品が多かった。
大手中心に、企業が研究開発へ投資するようになったという功績もある。産業の発展や雇用の確保などに寄与している。企業が利益を出していれば税金も収めているだろう。社会貢献になっている。
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