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「結論ありき」プロジェクトが大抵失敗する理由 夢の自宅改築が悲劇になった夫婦の計画から学ぶこと

東洋経済オンライン / 2024年4月25日 18時0分

たいていのプロジェクトがそうであるように、目的を問わないことが失敗の根本原因となる(写真:Graphs/PIXTA)

規模の大小にかかわず、官民問わず、さまざまなプロジェクトは「結論ありき」で始まることが多い。だが、結論から始めると大抵はうまくいかない。

世界中のメガプロジェクトの「成否データ」を1万件以上蓄積・研究するオックスフォード大学教授が、予算内、期限内で「頭の中のモヤ」を成果に結びつける戦略と戦術を解き明かした『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』より一部抜粋、再構成してお届けします。

予定も予算もオーバーしたプロジェクト

デイヴィッドとデボラの夫妻の「大型」プロジェクトは、自宅のキッチンのリフォームだった。

ブルックリンの瀟洒(しょうしゃ)なコブルヒル地区に19世紀に建てられた、レンガ造りの4階建てタウンハウス。この1、2階と地下部分が、デイヴィッドとデボラの夫妻の住まいだ。この建物は、ニューヨークで撮影されたどの映画のセットと言っても通るだろう。コブルヒル地区に並ぶタウンハウスはどれも背が高いが非常に狭く、階段は細く部屋は小さい。デイヴィッドとデボラの住居は全部で111平米で、キッチンはヨットの調理場ほどの広さだ。

キッチンリフォームは、エンパイア・ステート・ビルの建設に匹敵する難題にはとうてい思えない。だが彼らの慎ましいプロジェクトは、エンパイア・ステート・ビルとは大違いで、スケジュールは遅延し、予算を超過した。それも、ちょっとやそっとではない。予定より18カ月遅れ、予算を80万ドル以上もオーバーしたのだ。

この驚愕の結果をもたらした根本原因は、早く始動させたいという衝動ではなかった。

2人は2011年頃からキッチンリフォームの夢を温めていた。とうとうリフォームを決意したときも、いきなり始めたりせず、経験豊富な建築家を雇った。建築家はキッチンと小部屋の間の壁を取り払って、キッチンのスペースを倍にしてはどうかと提案し、夫妻はこの拡張案を受け入れた。建築家は数カ月かけて詳細な図面を描き、ようやく計画を明らかにした。

「大きな図面のロールを抱えてきたよ」とデイヴィッドは回想する。「8通りの設計を見せてくれた。1つひとつをくわしく説明してから、なぜそれではダメなのかを解説し、それから次の図面を取り出して設計を説明し、またこんなことを言っていた。『実は、これも完璧ではありません。別の設計をお見せしましょう』って」

建築家が慎重に設計したリフォームの見積もりは、トータルで17万ドル。大金だが、物価の高いニューヨークではそんなものだろう。夫妻はリフォームを行うことに決めた。工事中は仮住まいに引っ越し、3カ月後に戻る予定だった。

始まったとたん注文を「追加」をしたくなる

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