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日本復活への「本当の経済成長戦略」を提案しよう カネを経済成長のために使うのは大間違いだ

東洋経済オンライン / 2024年5月18日 8時30分

第3に、大学の学費無償化は、大学教育の質を劣化させる。タダだから大学に来る学生は、なんとしても大学で学びたい学生にとって邪魔である。これは大学教育だけでなく、すべてのサービスに言えることで、タダより悪いものはない。貧困により大学に行けないという問題は、別の手段で解決すべきである。

第4の高校無償化も同じである。やるべきは、誰でもタダで高校や大学に行けるのではなく、やる気のある学生に質の高い教育を提供することである。

これらがやるべき政策である。質の高い教育を提供すること。これに尽きる。

では、そのためにどうするか。

まず、大学教員の意識を改めさせることである。われわれ大学教員は、研究こそがやるべきことで、教育は税金のようなものであり、嫌々遂行する義務だと思っている。「ご機嫌いかがですか」の代わりの挨拶の文句は、「そちらの大学の授業負担はどのくらいですか? えっ、授業しなくていい? すばらしい!」というものである。これを一切やめることである。

もちろん、研究を頑張る教員もすばらしいが、彼ら、彼女らも、教育についても全力で、かつ楽しんでやりがいを感じてやるべきである。それと同時に、大半の教員は教育を中心に行うべきである。

私がかつて習ったハーバード大学の経済学部では、教授たちの過半数がノーベル賞を取っていて驚愕ものだが、それでも彼らの研究のうち、多くの人が読むべき価値ある論文は、どんなに多くても10本に1本である。

つまり、世の中の研究、論文と言われているもののほとんどは価値がゼロなのである。1ミリだけでも価値があるものを価値があるとしても、依然ほとんど価値ある研究はない。だから、現在、日本にいる大学研究者のほとんどは、私を含めて、エネルギーの大半を教育に費やすべきである。

ハーバードなど、アメリカの一流大学は割り切っていて、教育専門の教員スタッフを多数抱えている。また、良い教科書の大半は(例外も多いが)、教育をメインにする研究者によって書かれている(教科書の執筆をメインにする教員もいる)。大学教員をもっと教育に関して働かせるべきなのである。これは、高校も同じで、中学、小学校も同じだ。教師にもっと授業をさせる、授業準備に時間とエネルギーを使わせる、のである。

労働環境改善のために給料を増やしても意味がない

13日に出た中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)での答申が賛否両論を呼んでいるが、ここでは、教師の労働環境改善のために、残業代が出ない分の手当を増やすという提言が、象徴的に議論の対象となっている。

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