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「ステージ4」膵臓がん患者が沖縄に"旅立つ"心境 旅先で最期を迎えることになるかもしれない

東洋経済オンライン / 2024年5月31日 14時0分

フェリーで鹿児島を出て沖縄へ向かう(提供写真)

ツアーナース(旅行看護師)と呼ばれる看護師たちの存在をご存じでしょうか?

「最後の旅行を楽しみたい」「病気の母を、近くに呼び寄せたい」など、さまざまな依頼を受け、旅行や移動に付き添うのがその仕事です。

ステージ4の膵臓がんを患った稲本秀俊さん(当時49歳)は、可能なすべての治療を乗り越え、緩和治療を行っている最中、意識が朦朧とする中、「沖縄に行こう」と声をふりしぼるようにして家族に話しました。そこから、ツアーナースと家族の7日間におよぶ旅が始まります。

父の膵臓に見つかったステージ4のがん

家族4人の沖縄旅行から戻った13日後、稲本秀俊さんは53年の生涯に幕を閉じた。

【写真で見る】「ステージ4の膵臓がん」患者の沖縄への旅行のリアル

「最後に旅行に行けて、本当に良かった。決して長くない人生だったけど、父は幸せだったと思います」

現在、夫の仕事の関係でアメリカ・ロサンゼルスに暮らす稲本愛里さんはそう言って微笑んだ。

2019年の冬。愛里さんの父、当時49歳の稲本秀俊さんにがんが見つかった。みぞおちに強い痛みを覚え、救急を受診したのだが、後日、精密検査で膵臓がんであることが発覚した。ステージ4の状態だった。

膵臓は「沈黙の臓器」と言われる。異常があっても、自覚しにくい。症状が現れたときには、すでに進行している場合が少なくない。秀俊さんも、まさにそのケースだった。

家庭での秀俊さんは、明るく活動的な父親だった。

「うちは、家族5人。父と母と、子供は私を含めた三姉妹です。家庭では父は私たち娘の話をよく聞いてくれる人で 、例えば仕事の愚痴を家で漏らすことはなく、弱い姿を見せる人ではありませんでした。だけど、自分の体ががんに侵されていることには、当然、強く動揺していました。がんであること、症状がかなり進行していることを聞かされた私たちも、大きなショックを受けました」(愛里さん)

アウトドア関連の趣味も多く、土日の休みにはよく家族を連れて海に出かけ、ウインドサーフィンを楽しむこともあった秀俊さんの姿から、がんの進行は想像もできないことだった。当時、大学4年生だった愛里さんは、大学院に進む予定を急遽変更し、父親の側で過ごすために、神奈川県の実家近くの会社に就職した。

抗がん剤治療を止め、緩和治療へ

すぐに闘病生活が始まった。主治医の説明によると、「手術ができるところまでがんを小さくするために、まずは抗がん剤の投与を始める」とのことだった。投与が始まると、それまで元気そうに見えていた父親の体が、どんどん小さくなっていくようで不安だった。

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