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年収500万の公務員が「貧困取材」を受ける事情 生きづらさは「日本特有の人間関係」にある?

東洋経済オンライン / 2024年6月13日 11時0分

シンイチさんがこれまで参加してきたフォーラムや研修会の資料。発達障害の特性であるこだわりの強さが発揮された“成果”ですねと水を向けると、「欠点も視点を変えると長所になるという考え方を心理学用語で『リフレーミング』というんです」と教えてくれた(筆者撮影)

現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

今回紹介するのは「人事評価は常に最低ランクで、転職組ということもあり、年齢には見合わない収入です」と編集部にメールをくれた40代の男性だ。

「障害者のふりをしている」と早合点

「私、目が悪いんです」

【写真】シンイチさん職場向けに自作した「私の取扱説明書」。自身の困りごとや避けてほしい言葉を詳細に記載している

地方自治体で働くシンイチさん(仮名、40代)は異動先の部署で、同僚女性からこうあいさつされた。後に視野が狭くなる視覚障害があることを知るのだが、このときは「視力が低い」という意味だと思い込んだ。女性の障害のことは、元からいる職員たちは知っていたが、書類を読んだり、歩いたりすることはできるため、中には「障害者じゃないよね」などと陰口を言う人もいた。

最初の思い込みと、周囲からの陰口が交錯した結果、シンイチさんは「視力が低いだけなのに、障害者のふりをしている」と早合点する。そしてついに本人に向かって「あなた、見えてるじゃん」と口走ってしまう。女性の仕事にミスがあったこともあり、ついきつい口調になったと、シンイチさんは認める。

このやりとりは想像以上に大事になった。女性が「パワハラを受けた」と訴えたからだ。シンイチさんは複数の上司から呼び出され、2時間以上にわたって「障害者差別解消法を知らないのか!」「お前がやったことは差別だ!」などと叱責された。

シンイチさんは、女性の障害のことは知らなかったと釈明したが、上司たちには言い訳をしていると映ったのだろう。追及はヒートアップしていく。

「いい年こいたおっさんが知らないはずないだろう」「規律性も、協調性もない。お前なんてどこにいっても通用しないぞ」

さすがに言葉が過ぎるのでは――。私が言うと、シンイチさんは「これまでの職場でもさんざんやらかしてきたので……」とうつむいた。

産業医に発達障害の可能性を示唆された

過去の問題まで根に持ち、人格を否定するような上司の糾弾はパワハラといわれても仕方ない。一方でシンイチさんが女性を傷つけたことも間違いない。シンイチさんはパワハラの被害者であると同時に加害者でもあった。

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