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赤字ローカル線は「ガソリン税」で維持すべきだ 「道路財源を回せ」藻谷浩介氏インタビュー

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 7時30分

藻谷浩介氏は「ガソリン税による地方鉄道の維持」を主張する(写真:本人提供)

利用者が少なく維持費をカバーできない赤字のローカル線を廃止すべきかどうかという議論がよく行われているが、ほとんど利用されない道路は維持費に見合わないから廃止せよという声はまず聞かない。道路はガソリン税などの税金で維持するものという考え方が国民の間に浸透しているためだ。しかし、『デフレの正体』『里山資本主義』などの著書を持つ地域エコノミストの藻谷浩介氏はこうした考え方に警鐘を鳴らす。平成大合併前の約3200市町村すべてを自分の足で訪問し鉄道と道路の両方に精通する藻谷氏に話を聞いた。

日本の鉄道政策はガラパゴスだ

――ガソリン税による地方鉄道の維持を主張されています。なぜでしょうか。

【写真】「ガソリン税による地方鉄道の維持」を主張する藻谷浩介(もたに・こうすけ)氏とは?

世界の常識に沿って、日本のやり方は「ガラパゴスだ」と指摘しているのです。世界の常識とは、「交通インフラは税金で整備し、維持する」ということ。旅客鉄道に関しては、路盤を税金で整備し、そこに民間企業が列車を運行させる、「上下分離」が普通です。

日本でも、道路はガソリン税で維持管理していますし、空港についても滑走路は自治体所有、港湾も岸壁は自治体所有です。バスやトラックの会社、航空会社、船会社は、こうしたインフラを無料、もしくは割り引かれた利用料で使っています。ところが鉄道だけは、鉄道会社が路盤整備から運行まで採算ベースで行うものとされている。これがガラパゴス。鉄道の路盤も、道路と同じくガソリン税で維持更新しなければ、理屈に合いません。

――赤字の鉄道路線は廃止すべしというのが世間の一般的な感覚です。

2022年にJR各社の赤字ローカル線について、国土交通省の有識者検討会が「存続すべきか、沿線自治体とJRでよく話し合え」と提言しました。この提言を受けて報道やネットのコメントでは「100円稼ぐのに2万4000円かかるような赤字線は廃止せよ」という声が高まりました。しかし、これには2つの疑問点があります。

まず、提言への疑問は、鉄道の存廃について話し合う利害関係者は自治体と鉄道事業者だけで、ガソリン税を徴収している国が入っていないということ。つまり最初から、「ガラパゴス日本」を維持しよう、という枠組みになっているのです。

そして報道やネットコメントへの疑問は、「100円稼ぐのに費用がいくらかかるのか」を基準にするのなら、一般道路は全廃になりますよ、ということです。東京と大阪を結ぶ国道1号線は、東京の環状七号線は、あるいは郊外団地の片隅にある住民のごくごく一部しか利用しない街路は100円どころか1円も稼いでいない。実際のところ、鉄道は少しは稼ぎがあるだけ、税金投入が少なくて済んでいる面もあるのです。

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