なぜ東京都知事選では政策が重要視されないのか 日本における「東京の真の役割」とは何なのか
東洋経済オンライン / 2024年6月29日 21時30分
ここに提案しよう。選挙の候補者のポスター掲示板を廃止するだけでなく、都知事選挙も都知事も廃止してしまえばよい。トップが必要なら、国会と同じく、議院内閣制のように、都議会議員の互選で選べばよい。少なくとも、エンターテインメントによってトップが選ばれるというおぞましい事態は回避できるだろう。
東京は本当に「ブラックホール」なのか
さて、選挙はエンターテインメントであるならば、逆張りの小幡績としては、本質的な議論を東京についてしてみたい。せっかく少子化問題が上がっているので、東京と日本の少子化問題を例に挙げて議論しよう。
実は、先日、あらゆる政策に関する有識者だが、少子化問題についてはさまざまな見識を持っている、ある尊敬する友人に、東京の少子化問題について、いろいろ教えてもらった。彼は、消滅自治体の議論がミスリーディングだと憤慨していた。とりわけ、「東京ブラックホール論」には強く反論し、日本を誤った方向に導くと反論を述べていた。
東京ブラックホール論とは、上智大学の中里透准教授の説明を借りると、
「出生率のデータが公表されると、東京都はいつも最下位となる。にもかかわらず、若者は東京に集まる。出生率の高い地域から低い地域に人が動けば、日本全体として出生数が減り人口減少が加速する。全国から若い人を集めておきながら、次の世代を担う子どもたちを生み育てることのない東京は『ブラックホール』である」(シノドスより)ということだ。
そして、中里准教授らは「これは事実に反する」と主張する。なぜなら、東京の合計特殊出生率が全国最低であるのは事実であるが、実際に生まれてくる子どもの数は必ずしも少なくないからである。
例えば、15歳から49歳までの女性1000人当たりの出生数で見ると、東京は全国で高いほうとは言えないが、全国最低レベルではない。だから、合計特殊出生率で地域ごとの差を議論するのはよくないという議論である。
中里准教授は、この問題を仮想的なケースを例示して説明する。
「いま、『東京国』と『地方国』という2つの地域からなる国を考える。東京国と地方国には20代の女性が100人ずつ居住しており、そのうち50人は「20代で結婚し子どもを産むことを予定している人」(20代で出産する予定の子どもの数は1人)、50人は「20代を未婚のまま過ごすことを予定している人」(20代で出産する予定の子どもの数は0人)であるものとする」(同)
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