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なぜ東京都知事選では政策が重要視されないのか 日本における「東京の真の役割」とは何なのか

東洋経済オンライン / 2024年6月29日 21時30分

この前提もまた極端であるが、現実は中里准教授の数値例と私の前提の間ぐらいにあるであろう。しかし、それでも50人の半分なら25人の子どもの純減であり、合計特殊出生率に現れているよりもはるかに大きな、東京の「ブラックホール効果」が存在することになるのである。

上で、合計特殊出生率と女性人口当たりの出生数とに違いが生じると述べたが、その理由は、合計特殊出生率は15歳から49歳までの女性を5歳ごとに分け、それぞれのグループ内での出生数の比率を、各5歳ごとの集団の母数を考慮せずに、つまり加重平均せずに単純平均しているのであり、人口当たりの出生数は単純に15歳から49歳までの女性の全人口とその出生数の比率を取っている。

その結果、15~19歳、20~24歳、25~29歳の実際の女性の数が少ない地方では、その年齢層の女性の出生率は高いので、合計特殊出生率は高くなるが、実際の出生数は少なくなる。逆に、東京では、15~19歳、20~24歳、25~29歳の層の出生率が地方に比べて極端に低く、その数字が足を引っ張って、合計特殊出生率が低く出るが、20~29歳の女性の人口自体は地方に比べて圧倒的に多いので、率は低くても出生数自体はそれなりの数があることになる。

しかし、これは、私の解釈からすれば、地方にいれば子どもを産んでいた可能性の高い女性のほとんどを東京が集めてしまい、その結果、彼女たちの出生率が非常に低くなったのであり、これこそまさにブラックホールであり、東京ブラックホール論は見かけ以上にもっと大きなインパクトを日本全体の出生数に与えているのである。

もちろん、地方社会における女性への圧力は望ましいものとは到底言えないし、その呪縛から逃げ出した女性の駆け込み寺が東京だ、という解釈も成り立つ(私の想定する行動モデルであれば、なおのことこの解釈は当てはまる)から、ブラックホールという語感とは別にそれは望ましいものである可能性もある。

ただ、事実として、東京はとてつもないブラックホールであることは間違いなさそうなのである。

国民にとって重要な選挙という認識がなされていない

さらに、東京だけでなく、都市部への移動はやむをえない、大学で勉強するため、仕事のために、地方から出ざるをえない、ということで、良い大学や良い仕事のない地方に原因がある、という見方もある。

だが、私はそうは思っていない。もう1つ、行動経済学的な観察として、地方の若者の多くは、大学に行くため、就職のために、東京に行くのではなく、東京に行くために、東京の大学に行き、東京で就職するのである。東京でなくてはだめなのである。

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