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なぜ東京都知事選では政策が重要視されないのか 日本における「東京の真の役割」とは何なのか

東洋経済オンライン / 2024年6月29日 21時30分

このときに、この後者の50人が、進学や就職のために地方国から東京国に移動すると、東京の出生率は結果的には低くなり、母数が減った地方国の出生率は高くなる。だから、東京の合計特殊出生率が低く、地方が高いのは見せかけで、実際には東京に結婚と出産をしない女性が集まっているだけだというのが、中里准教授らの主張のようだ。

「地方国」と「東京国」の関係とは?

この議論に、論理的な間違いはない。しかし私は、実際問題としては少し違うのではないかと思う。なぜなら、前提が現実と異なると思うからだ。

すなわち、彼らの例では、各個人は「20代を未婚のまま過ごすことを予定している」(同)といったことが前提になっている。だが私は、そうではなく、人間の多くは弱いから、多数派は環境や周りの雰囲気に影響されて行動を決めるし、人生の選択も(選択というよりも自然の成り行きで、という場合のほうが多いということもあるだろう)、環境に大きく影響されるだろうと考えている。

彼の言う「地方国」にいれば、周りの多くは早く結婚し、子どもも早く持つ。そうすると、なんとなく一人だけ独身でいるのも居心地が悪い。親族が心配して、結婚を勧めてくるというプレッシャーにさらされる。その結果、結婚したほうがいいかなあと思うようになる。

一方、「東京国」にいれば、結婚していても独身でも、同じように行動できるし、一人で出かける場所もあり、おひとり様ディナーに何の違和感もない。仕事もあるし、遊びもできるし、同じような仲間もいっぱいいる。居心地は悪くない。「結婚ねえ、したくないわけではないけど、今困っていないし」と思っているうちに、年齢が上がってきて、「まあいまさら無理に相手探しても、結婚しなくても、まっいいか」となる。

東京は解放された「ブラックホール」?

私はこの例のほうが多数派だと思うのだが、もしそうだとすると、東京はとてつもないブラックホールであることになる。

合計特殊出生率という「特殊な」統計的数値はミスリーディングで、東京の出生に関する過小認識をもたらしている、という彼らの認識の正反対で、合計特殊出生率に現れている東京の低さ以上に、それを大幅に上回る出生率の低下の原因を「東京」への移住がもたらしているのである。

つまり、前述の50人の移動によって、移動しなければ、地方国で結婚出産していた可能性が高かった女性が、東京国へ移動することによって、生涯未婚(あるいは20代未婚)であることを選択するようになった、ということを意味するからである。純粋に50人子どもが減ったのである。

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