「国土防衛に強い執念」持つイスラエル、驚愕の歴史 根源にあるのは「自由への長い苦難の道」
東洋経済オンライン / 2024年7月10日 21時0分
2023年10月に起こったパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃は世界に衝撃を与えました。長期化するパレスチナ問題の根源を理解する一助として、今回はイスラエル建国の歴史について、解説します。
※本稿はラリー・コリンズ、ドミニク・ラピエール著、村松剛訳『[新版]おおエルサレム! アラブ・イスラエル紛争の源流 上』から一部抜粋・再構成したものです。
離散と悲運が産んだパレスチナの地へのつながり
ベン・グリオンの民にとって、自由へのこの道は長く苦悩にみちたものだった。彼らの祖先ヘブル人たちが、その指導者アブラハムに神が約束したこの土地に最初に姿を現わしたときから、この夜の投票がそれを返してくれるまで、苦悶と戦いの4000年が流れている。
メソポタミアの出身地からここに到着してまもなく、ヘブル人たちは追放され、1000年にわたる亡命と奴隷とそして戦いの生活を課せられた。その後モーゼに導かれて帰国し、ついにユデアの丘の上に最初の主権国家をうちたてるのである。
しかしダヴィデとソロモンとの両王の下での絶頂期は、1世紀とつづかなかった。アフリカ、アジア、ヨーロッパの街道の交叉点に位置し、周囲には不断の誘惑のたねとなる土地に住んで、彼らは次の1000年間、近在の諸帝国からの攻撃に耐えねばならなかった。
アッシリア、バビロン、エジプト、ギリシャ、ローマが次々に彼らを猛攻し破壊し、再度にわたる追放と神殿の破壊という重罰を彼らに課した。モリアの丘に立つ神殿は世界最初の唯一宇宙神、ヤハヴェの栄光に捧げられたものである。
しかしこの二度の離散と彼らにつきまとった悲運の連続こそが、父祖の地への肉体的かつ神秘的なつながりを生み、これを存続させたのだった。世界の諸国民はこの夜、その請求権を認めた。
ユダヤの民の不運は、愛を説く一宗教の発展とともにはじまった。異教徒大衆を転向させることに熱心だったキリスト教会の初期の教父たちは、彼らがひろげていた新しい信仰とユダヤ教とのあいだの溝を強調することに、全力をふるった。
ビザンツの皇帝テオドシウス2世は、この意志を立法化して法典とし、ユダヤ教を分派と宣言して、ユダヤ人を法によって隔離した。つづいてフランク族の王ダゴベールは、彼らをガリアから追放し、スペインの西ゴート族は彼らをキリスト教に引きいれるためにその子供を奪った。
6世紀に、ビザンツのもうひとりの皇帝ヘラクリウスは、ヘブルの祭儀の実行を非合法化した。十字軍の時代とともに、組織的迫害が訪れる。サラセン人ははるかとおくに生活していたが、それでも彼らは危険だった。ユダヤ人たちは手を伸ばせば届く範囲の、ヨオロッパ諸国に住んでいる。キリスト教信仰の戦士たちは彼らにおいて、その宗教的情熱をいっそう手近にかつ容易にみたすことができたのである。
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