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消えゆく国鉄気動車「キハ40」まだ乗れる路線 北海道や九州、確実に走っているのはどこ?

東洋経済オンライン / 2024年7月13日 7時0分

冬の函館本線を走るキハ40形。2024年3月で同線の札幌―旭川間から引退した(写真:Jun Kaida/PIXTA)

まだ辺りは暗い早暁、真冬の札幌駅。遠くに前照灯の小さな光が現れる。やがて古い気動車がエンジンの音を震わせ、ゆっくりと入線してきた。2両編成の姿は大都市のターミナルには少々場違いだが、あまり人目につかないこの時間だからこその光景にも思える。

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早朝にもかかわらず、ホームには多数の乗客が待っている。列車が停まり、一息おいてドアが開くとともに続々と人々が車内に乗り込んでいく。朝帰りと思われる若者の男女、これから仕事にいくのだろう背広姿の男性、そしてこの列車を目当てとする鉄道ファン。

札幌5時54分発、旭川行き普通列車。電化されているこの区間に古ぼけた気動車が充当されるのはこの1本のみだった。

郷愁を誘う昭和の気動車

2024年3月のダイヤ改正に向けたJR北海道の2023年12月15日付プレスリリースには「石北線と釧網線の快速・普通列車すべてをH100形電気式気動車に置き換えます」との記載があり、その内容には函館本線の札幌―旭川間も含まれていた。

私が乗車したのは1月4日で、古い気動車が走行するのはもう残りわずかとなっていた。

この車両はキハ40系といい、国鉄時代の1977年から1982年にかけて888両が製造された当時の標準型気動車である。北海道の厳しい環境の中で40年以上を経て、改造やメンテナンスは施されているものの老朽化は隠せない。けれども、昭和の雰囲気を残した手差しの行き先表示、青いモケットのクロスシート、むき出しのネジや蛍光灯、寒冷地北海道特有の二重窓、乗降口とデッキで仕切られ包みこまれるような客室は郷愁を誘う。

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定刻になり列車は静かに動き出す。大都会を進むが、ほんの10分ほど、厚別を過ぎる頃にはビル群も途切れ、周りは真っ暗となる。道路脇のオレンジ色の外灯だけが浮かび、ときおり通る車のライトがまだ夜の風情だ。

仕事に行く人だろうか、大麻、野幌と駅々で地元の客が乗ってくる。けれども車内はみな無言で、ディーゼルエンジンの音と雪でくぐもったレールの響きだけが聞こえてくる。

6時半を過ぎると、遠くの空がほんのり明かりを帯びてくる。地平線に近いところは赤く、上方に向かうにつれ薄い青から濃い青となる。岩見沢に到着する頃にはすっかり明るくなった。辺りは雪深く、民家の壁面に反射する朝日が眩しい。

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