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「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」

東洋経済オンライン / 2024年7月16日 8時20分

うち、最も新しいジュディスらの著作に従って、オバマ政権のネオリベラルな失政を整理しておく。同書の第4章「オバマと失われた機会」はこの問題を詳述している。

オバマは投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻直後に政権を獲得した。大恐慌時代のフランクリン・ルーズベルトのように大危機の中で景気と雇用の回復を図って、民主党が金融業界の言いなりの政党でなく「普通の市民」の側にあることを示す絶好の機会を得たはずだった。

しかし、それを実行せずに大きな機会を逃した。選挙に勝利すると、オバマはそれまでの金融業界批判をやめて、クリントン政権でおなじみのウォール街人脈を経済担当閣僚や高官に任命する。当時シティバンク会長になっていた元財務長官ロバート・ルービンの子飼いのような人物ばかりだ。明らかに、一連の金融危機に関して刑事事件になるような厳しい捜査などさせないという業界へのシグナルだった。

その後、実際に大手保険会社AIGに1730億ドル(26兆円)もの救済資金を投入しながら、同社役員らがそこから1億6500万ドル(250億円)のボーナスをせしめたことが露見し、大きなスキャンダルとなってもおとがめなし。

製造業の大手自動車ゼネラルモーターズ(GM)に対しては政府救済資金投入にあたって最高経営責任者の辞任を条件としたのに対し、シティグループやバンク・オブ・アメリカなど金融業界への救済資金は、そうした条件もなしに投入された。明らかに顧客を欺したようなケースがあっても、司法省はまったく手をつけていない(最終的に民事で決着が図られた)。

リーマン破綻を受けて、オバマ政権発足時には、カリフォルニア大バークリー校教授から招いたクリスティーナ・ローマー大統領経済諮問委員会委員長が深刻な不況と失業を回避するため少なくとも1兆2000億~1兆8000億ドルの景気刺激策が必要だと主張していたのに、金融業界の意向を受けたローレンス・サマーズ国家経済会議委員長は財政赤字が投資家や市場に悪影響を及ぼすと強く主張。

オバマも同調して、刺激策は8000億ドル規模に縮小された。

結果、刺激効果は出ず、失業率は10%まで上昇し、ローマーは再度大型刺激策を提案したが、今度は金融業界に配慮するティモシー・フランツ・ガイトナー財務長官らによって阻まれた。オバマも連邦予算の赤字削減ばかりにこだわった。

景気は回復せず失業が増える中で、住宅ローン破産は急増し、その数は1000万件を超え、ローン返済中の全世帯の4分の1に及んだが、オバマ政権はローン破産救済策をまったくとらないままだった。破産宣告前の返済者についてとられた救済策も銀行側の消極姿勢でほとんど実行されなかった。

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