「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 8時20分
当時の民主党は連邦議会でも上院で60議席と議事妨害を阻止できる多数を占め、下院でも圧倒的多数だったから、いくらでも景気刺激策や破産救済策を通すことができたのに、機会を逸した。そのためアメリカの中間層の崩壊を招き入れてしまう。
オバマケアは中間層から貧困層への再分配か
日本では一般にオバマ政権の進歩派的な成果のようにみられている医療保険制度改革(通称オバマケア)も、実態は財政赤字問題や保険・医療・製薬各業界への配慮に縛られ、できあがった複雑な制度は必ずしも中間層に歓迎されなかった。
無保険者が減る効果はあったが、中間層では保険料が上がるケースが多く出た。また新制度により老人医療保険予算が削減された。世論調査では市民の過半数がオバマケアについて「好ましくない」と答える状態が続いた。オバマケアは(富裕層でなく)中間層からむしり取って、貧困層に与える再分配だという印象が強まるだけであった。景気回復で失敗した穴を、医療保険制度改革で埋めようとしたが、これも保険会社などの利権に気を遣って達成できず、逆効果になったという構図だ。
こうして中間層の崩壊が起きる一方で、AIGの事例のように税金で救済された大手金融機関の幹部らは莫大なボーナスをむさぼり、IT産業は規制のないまま稼ぎまくって、巨大な利益を得続けた。
IT産業と民主党の強い結びつきがそうした野放図を許したとみられた。オバマ時代は格差が著しく広がり、沿岸部と内陸部の分断も顕著になっていった。
2010年中間選挙で民主党が下院で63、上院で6と大量に議席を失ったのは、当然であった。白人労働者票や農村部票は前回選挙に比べ23~25ポイントも減らしている。2008年大統領選当時のオバマ熱は、2010年にはすっかり冷めた。2011年には『ニューリパブリック』記者の調査報道に基づく本で、金融業界優先のオバマ政権の体質が暴かれることになった。
2011年秋にニューヨークで起きた「オキュパイ・ウォールストリート(ウォール街を占拠せよ)」運動は、まさにこうした状況(特に格差)への激しい市民(特に若者)の怒りの噴出であった。
他方、主として共和党支持者の多い地域では、税金による大企業救済へのリバタリアン(自由至上主義)的な反発からティーパーティー運動が起きた。この運動は共和党の政治活動家らに取り込まれ、オバマ政権の縮小された景気刺激策に対しても「小さな政府」を求めて反対し、中間層としての自らの利益を損なうような倒錯した行動をとった。
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