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「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」

東洋経済オンライン / 2024年7月16日 8時20分

これらの運動が、2016年の左右の激しいポピュリズム噴出につながっていく。

トランプが「オバマは外国生まれだ(大統領になれる資格がない)」という主張(バーサリズム)を激しく唱え出すのも2011年ごろからだ。それが市民の間に広がる素地は、中間層の崩壊を招いたオバマへの市民の怒りにあったと考えられる。

バーサリズムは元来、2008年大統領選の民主党大統領候補選びで、オバマと激しく争ったヒラリー・クリントンの支持者から始まった。それが、トランプによって復活させられ、共和党陣営に利用された。これも民主党・共和党の合作なのだということは忘れない方がいい(Ben Smith and Byron Tau “Birtherism: Where it All Begin,” Politico, Apr. 22, 2011.)。

「Qアノン」「ディープ・ステート」が映し出すもの

「オバマは外国生まれだ」というバーサリズムの前には、9・11テロはブッシュ政権が仕掛けたという陰謀論が広まる現象もあった。前者がオバマの中間層切り捨てに対する怒りの反映だとすれば、民主党支持者らが始めたとされる後者は無益な戦争に駆りだされる庶民の反発の投射だと考えていいだろう。

とすれば、こうした陰謀論につらなってトランプ支持者の間ではびこるようになったQアノン現象や、そこで議論されるディープ・ステート(DS:闇の国家、国家内国家)も、ただバカげた話だと切り捨てるのでなく、それが何を反映しているのか考えてみるべきであろう。

かつてニクソン大統領を支持した人々は「サイレント・マジョリティ」すなわち「物言わぬ多数派」と呼ばれた。

ミシガン大学などで教えた社会学者の故ドナルド・ウォレン(Donald I. Warren[1935~97])は1970年代に「ものいわぬ多数派」にフィールドワークで分け入り、実態を知ろうと努めた。

その結果、彼らは妊娠中絶など社会問題では保守的立場をとる一方で、社会保障や医療保険ではリベラル(進歩的)な政策を求め、単純に左右に分類できない存在であると分かった。彼らは70年代の混迷する経済や社会の価値観に翻弄されながら、生活を守ってほしいと願う人々だった。エリートに支配された政治に自分たちの声は届かず、政治から疎外されているとも感じていた。

ウォレンは彼らが動員されれば、大きな政治変動が起きるとみて、ミドル・アメリカン・ラディカルズ(アメリカ中産階級過激派)と名付けた。頭文字をとってMARsという。ほとんど忘れ去られたウォレンのMARsの概念は、トランプ登場であらためて注目を浴びることになった。

「陰謀論」の底流にある「疎外」

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