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「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」

東洋経済オンライン / 2024年7月16日 8時20分

エリートに支配された政治に自分たちの声は届かず、政治から疎外されているというこのMARsの絶望こそ、裏返せば実際の権力はどこか隠されたところにあるというQアノンやDSのような陰謀論を生み出す温床であろう。

実際アメリカでは、すでに1940年代、50年代から人民の意向とはかけ離れてエリートだけが政治を意のままにしているという問題提起はなされてきた。

『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』第2章で論じる戦前の代表的トロツキスト、ジェームズ・バーナム(James Burnham[1905~1987])の『経営者革命』(The Managerial Revolution[1941年])やC・W・ミルズの『パワー・エリート』(1956年)、少数の利権団体のみで政治が動かされていると論じたE・E・シャットシュナイダーの『半主権人民』による批判は、アメリカ民主主義の空洞化を鋭く突いたからこそ、大きな議論を巻き起こした。とすれば、ディープ・ステートのような陰謀論はエリート支配批判の一形態、庶民版とみることもできよう。

アメリカの白人の中下層階級に起きている「絶望死」現象を見いだしたプリンストン大学のアン・ケース、アンガス・ディートン両教授は、政治力と財力が集中した政治環境の中で民主党も共和党も金持ちたちだけの政治しか行っていないと批判。白人労働者階級の大半は「選挙は富裕層や大企業によって操作されているので自分が投票しようがしまいが関係ない」と考えている実態を紹介し、2016年にトランプが大統領選で勝利したのはそうした点を考慮すれば「理解可能だ」と述べている(アン・ケース、アンガス・ディートン『絶望死のアメリカ――資本主義がめざすべきもの』松本裕訳、みすず書房、2021年、15頁)。

トランプ・サンダース現象とは疑似革命

まさに不平等の末に、下層の人々は民主主義から疎外されていると感じている。選挙も恒常的にエリートが勝手に操作していると考えているのだから、「大統領選結果はフェイクだ」とトランプが声を挙げれば、むしろ「やっと本当のことをはっきりいってくれる政治家が現れた」と思っても不思議はない。

実際、アメリカでは一部エリートによる支配が固定化して、民主主義は正常に機能しなくなっているということを示す優れた分析はバーナム、ミルズ……と先世紀後半からずっと続いてきたのだから、選挙はフェイクだというのは本質を突いたところさえあるのだ。

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