「入ることがゴール」と若者が考えてしまう理由 自分が選択した人生をいかに肯定できるか
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 13時0分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――例えば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、前回、前々回に続いて、著者の舟津昌平氏と教育者である鳥羽和久氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。
社会が設定した欲望を自分の欲望と思い込む
鳥羽:舟津さんの本の中に、「楽しい仕事に就くのではなくて、楽しさを見つけるように生きることで、我々は簡単に消費されない楽しさを享受することができる。教育とはそのためにあるものだ。楽しさを発見する過程を支えるためのものだ」という言葉がありましたが、本当にそのとおりだと思いました。
若い世代に限ったことではありませんが、受験でも就職でも、どのような選択をするかに気を取られすぎて、自分が選択した先をいかに肯定できるか、という肝心なところが意外と考えられていないし、誰も教えてくれないですよね。だから、舟津さんのここの視点にはとても共感しました。
舟津:ありがとうございます。
鳥羽:選択に踊らされることの問題点は、資本の欲望というか、社会が設定した欲望に絡め取られてしまうこと。それって実は自分の欲望ではないんですよね。子どもたちと話していると、進路先の選択でも実は行きたい理由をちゃんと掘り下げられている子ってとても少なくて、その証拠に経営学部に行きたいって言った子に、「じゃあ、経営学部と経済学部、何が違うの?」って言ったら、ほぼ100%が答えられないんですよ。ほとんど雰囲気か偏差値で選んでいる気がする。
舟津:私は両方の学部で働いたことがありますけど、間違いないですね(笑)。
鳥羽:雰囲気か偏差値って、まさに世間が作った欲望に踊らされている証拠だと思うんですよ。きっと就活も同じような仕組みがあるのでしょう。「楽しさを発見する過程を支える」っていう部分が高校でも大学でも顧みられていない。こういう自己疎外によって社会になじんでいく仕組みが昔から受験をはじめとする教育制度には組み込まれていて、それが若い人たちを不幸にする原因になっているんじゃないかと思います。
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