高円寺にだけ存在する「なんか自由な感じ」の正体 若者だけでなく中年にも居場所がある安心感
東洋経済オンライン / 2024年7月24日 15時0分
定職に就かず、家族を持たずフラフラすごし、ネットの仲間を集めてシェアハウスを作った20代と30代。「日本一有名なニート」とも呼ばれたphaさんが、40代半ばのいま感じるのは「すべての衰え」。
ずっと右上がりに楽しいことだけやって生きていけたらいいな、と思っていたのに、最近は本を読んでも音楽を聴いても旅行に行っても楽しくない。
そんな中年の日常を描いたエッセイ『パーティーが終わって、中年が始まる』から抜粋し、3回にわたってお届けします。
前々回記事はこちら:『定職・家族なしで40代突入、感じた「生き方の限界」』
前回記事はこちら:『中年になると否応なく増す「不要な存在感」の功罪』
「路上で宴会」が日常の高円寺
高円寺駅の北口のロータリー広場に来るたびに、なぜ東京の中で、高円寺だけがこんなに自由な感じなのだろう、と思う。
大体いつも、昼でも夜でも、路上飲み会をやっている集団が何組かいる。他の駅でも、駅前の広場で飲み会をしている人はいなくはないけれど、高円寺は圧倒的に多い。ギターをかき鳴らしている人もいるし、小さなスピーカーからヒップホップを流している人もいる。
何種類かの音楽が入り交じった上に、路上で飲んでいる人たちの会話と、かすかに聞こえる駅のアナウンスと、通り過ぎる電車や車の音と、すべての音がごちゃまぜになっていて、その中心にいるとなんだか心地いい。広場の隅の喫煙所はいつも満員で、何人かはスペースからはみ出したままで吸っている。
東京でこういうのってありなんだ。東京は、とにかく土地が狭くて高くてお金を払わないと何もできなくて、路上で宴会、みたいなちょっと人と違うことをするとすぐに「人に迷惑をかけるな」と怒られる場所だと思っていたのだけど、高円寺ではみんなずいぶん自由にやっているように見える。「高円寺はこういう街だからしかたない」とみんなが思っているせいだろうか。いいね。本来、街というのはこれくらい自由度があるべきだと思う。
ここに来るといつも、京都の鴨川の河原を少し思い出す。便利な場所に広場があって、お金を払わなくても自由に使ってよくて、みんなが酒を飲んだり楽器を演奏したり、特に何もせずにぼーっとしたりしている感じが似ているのだと思う。
もっとも、鴨川は静かで緑があって遠くには山々が見えるのに比べて、高円寺の北口はコンクリートだらけで騒がしくてギラギラとしたビルに囲まれているから、全然雰囲気は違うのだけど。高円寺の北口に鴨川の河原が広がっていたらいいのにな。
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