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高円寺にだけ存在する「なんか自由な感じ」の正体 若者だけでなく中年にも居場所がある安心感

東洋経済オンライン / 2024年7月24日 15時0分

昔から本屋が好きだったのに、どうして本屋で働くということを今まで考えなかったのだろうか。まあこの店みたいに小さな個人書店を手伝うのと、大きな書店に就職するのとではだいぶ違うとは思うけれど、もし大学を卒業したとき、就職先として書店業界を選んでいたら、定職につかずにふらふらと生きるのではなく、順調に会社員として働き続けていた可能性もあったのだろうか。

いや、多分だめだな。20代の頃の自分は本当に社会性や協調性がなかったので、どこに就職しても数年で辞めてしまっていただろう。この店の仕事が続いているのは、40代になった今だからだ。

昔の自分は落ち着きがなさすぎて、1日8時間同じ場所に座って勤務するのが本当に苦痛だった。それが少し落ち着いてきたのは四十路を過ぎてからだ。単に加齢とともに動き回るエネルギーがなくなってきただけなのかもしれないのだけど、その衰弱のせいでこういった店番ができるようになったのならそんなに悪くない。

書店員の仕事は楽しいけれど、フルタイムで働いているわけではないし、それだけで食べていける収入にはなっていない。まあ楽しいからそれでいいかと思っている。

「仕事をするとお金がもらえる」が理解できない

昔からずっとそうで、今でも相変わらずそうなのだけど、仕事とお金に関係があるということがうまく理解できない。

もちろん理屈としては、「仕事をするとお金がもらえる」という単純な因果関係はわかっている。しかし、自分の中ではいつまで経っても「興味のあることをやっていたらなんとなくお金が入っている」という感覚で、それ以外の意識で上手く仕事ができないのだ。

30代くらいの女性がひとりでやってきて、15分ほど店内を見たあと、人生相談の本と台湾の本を買っていった。

本屋にふらっとやってくる人は、差し迫った切実な悩みを抱えているというよりは、何かちょっと面白いものや、日常に刺激を与えてくれるものを求めていることが多いように思う。

本屋でぶらぶらと本棚を見て回るうちに、少しずつ心の中が整理されて、自分が何に興味を持っているのか、自分の悩みとはなんだろうか、というのを自覚していくのだろう。

本屋で店番をしていると、そういう瞬間にたくさん立ち会えるのが楽しい。

危機感を持つ「回路」が壊れている

ここ数年、貯金は減り続けている。大して仕事をしていないからだ。

普通はこういうときにもっと焦るものだと思う。だけど、なぜだか焦る気にならない。危機感を持てない。多分そういう回路が壊れているんだと思う。

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