ウォール街に定着した「ブラック・スワン」戦略 「暴落時費用対効果」を常に得られるポジション
東洋経済オンライン / 2024年7月30日 11時0分
問題はここからだ。損失を取り戻すには、元手の金額に戻すだけでも、株が100%上がらなくてはならない。下がった分の50%ではなく。
要するに、肝心なのは大きな損失を避けることである。
ユニバーサは暴落時、しかも暴落時にだけ巨額の利益が生じるオプションを購入することによって、これを実行した。オプションとは、特定の期間内に株式を一定の価格で購入または売却する権利を得る契約をいう。
ユニバーサは毎日、暴落時に利益を上げるいわゆるプット・オプションを購入している。通常この投資からは利益が発生せず、ユニバーサは少額の損失を受け入れている(このプロセスを同社では出血と呼んでいる)。
しかしいざ利益が発生すれば、重ねてきた損失の総額よりはるかに大きい。スピッツナーゲルはこの効果を爆発的なダウンサイド・プロテクションと呼んでいる。自宅が全焼したら住宅ローンの額の3倍(あるいはそれ以上)の保険金が下りる火災保険のようなもの、と考えてほしい。
雪崩、地震、ハリケーンが起きれば成功する戦略
これはウォール街の大半のプロが行っている投資とはまったく逆の手法だ。
ウォール街のトレーダーたちは、年度末に懐を温めてくれるボーナスを念頭に、毎日平均して小さな利益を積み上げるつもりで投資を行う。それは、稀ではあるが市場が崩壊した際には多額の損を出すリスクを取ることでもある。
ユニバーサは逆に、1日や1週間で多額の損を出すことは絶対にないが、通常は毎日のように少額の損失を出す可能性があり、実際に出している。雪崩、地震、ハリケーンが起きれば成功する戦略なのだ(タレブがかつて私に話した言葉に倣えば、「雨ではなく、干ばつか洪水を予想している」)。
2020年初めの時点で、ユニバーサの戦略は突出した成功を収めていた。
大手会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングが2008年の立ち上げから2019年12月までのユニバーサのブラック・スワン戦略を監査したところ、ヘッジファンドの成功(または失敗)を測る一般的な指標である投資資本の平均年間収益率が105%と驚きの高さだった。
つまりユニバーサは平均して年間105%の収益を出していたということで、これは世界トップクラスのヘッジファンドと同等か上回る業績だ。しかもこの数字には2020年初めの4000%超の利益は含まれていない。
この収益を実現したのは、ユニバーサの誰かが市場の向かう方向、上がるか下がるか横ばいになるかを予測した結果ではない。
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