高裁、異例判断「取り調べ検事が被告に」の根本問題 「プレサンス事件」が迫る捜査手法の転換
東洋経済オンライン / 2024年8月17日 9時30分
大阪高等裁判所(村越一浩裁判長)は8月8日、不動産会社プレサンスコーポレーションの元社長である山岸忍氏の元部下に違法な取り調べをしたとして特別公務員暴行陵虐罪で告発されている検事(当時は大阪地検特捜部検察官)を、審判に付する旨の決定(付審判決定)をした。
犯罪があった場合に捜査をして訴追をする検察官が、取り調べにおける言動を理由に刑事裁判の被告人になるということは前代未聞である。いったい何があったのか。
机を叩く、大声で怒鳴る、侮辱的な発言を行う…
大阪高裁によると、検事は取り調べの際に、
「既に収集していた証拠(メモ)と整合しない供述をし、なお弁解を重ねようとしたK(編集部注:Kは山岸氏の部下)に対し、その話を遮るように、机を叩いた」(付審判請求の抗告認容決定文より抜粋)
「約50分間にわたりほぼ一方的に責め立て続け、約15分間は、大声で怒鳴り続けており、その発言内容も、Kを執拗に責め立てて、虚偽供述があるはずである、証拠は十分で、責任は逃れられないなどと述べ、威圧的な言葉を交え、Kの人間性に問題があり、あるいは、その人格を貶める趣旨の侮辱的な発言を行う」(同)
といった行動をとっており、
「Kから事実を引き出す前提のやり取りというより、威迫して、検事の意に沿う供述を無理強いしようと試みていると評価できる」(同)
「そのような言動に出る必要性も相当性も見出せないのに、机を叩き、その後一定時間にわたって怒鳴り、時には威迫しながら、Kの発言を遮って、長時間一方的に同人を責め立て続けた検事の一連の言動は、陵虐行為に当たり、検事には、特別公務員暴行陵虐罪の嫌疑が認められる」(同)
という。
さらに補論として、かつて大阪地検特捜部における一連の不祥事を受けて「検察の在り方検討会議」が立ち上げられ、平成23年3月に「検察の再生に向けて」という提言が取りまとめられ、取り調べの録音録画が法制化された経緯などを指摘したうえで、
「今回の事案が、上記のような経緯を経て導入された録音録画下で起きたものであることを考えると、本件は個人の資質や能力にのみ起因するものと捉えるべきではない。あらためて今、検察における捜査・取調べの運用の在り方について、組織として真剣に検討されるべきである」(同)
と警鐘を鳴らしている。
筆者は弁護士として、刑事事件で被疑者・被告人を弁護する立場の弁護人として刑事裁判に関与してきた。今回の事件を契機に改めて、憲法上保障されている黙秘権の意義、刑事事件の捜査における取り調べのあり方について考えてみたい。
取り調べ依存型の捜査観が招いた今回の事件
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