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火星でコケが育てば人類は住めるようになるのか 研究者が語るテラフォーミングの意義と可能性

東洋経済オンライン / 2024年8月23日 19時0分

堀口 コケは50年ぐらい生きますか。50年でペイできればいい、50年のスパンでやったほうがいいということになれば、世界中で動きが出そうです。

藤田 研究予算を取るにも、数値は必要ですね。

堀口 誰も10年のスパンで投資を回収できるとは思っていません。50年、100年のスパンなら有効性を出せるかもしれないですね。藤田先生の現状の研究内容を教えてください。

火星に適したコケをつくりたい

藤田 テラフォーミングを研究タイトルに入れた予算を獲得し、研究を進めています。コケは光と水と空気があれば、育ちます。今から5億年ほど前に今いるコケの先祖が初めて陸地に現れて、それ以来脈々とその子孫が生きながらえ、今のコケに至っていると考えられています。

巨大な肉食恐竜はコケが陸上に進出してからずっと後に現れましたが、今では絶滅してしまいました。その間もコケは絶滅することなく地球で生き残ってきました。このようにコケの環境適応能力、生存能力はすごいのです。 コケのこうした能力をさらに伸ばして、火星に適したコケをつくりたいと考えています。コケのゲノムを改変して火星で育つコケをつくり、テラフォーミングに近づけたいと思っています。具体的には、重力の大きさを変える装置をつくったり、火星のレゴリスの上で育つコケや、火星の大気の中で育つコケなど、それぞれの条件を個々にクリアできるコケをつくります。それから、全部を火星の条件に近づけます。

いっぺんにやると難しいので、個々の条件をクリアしたコケをつくり、火星全体の条件にできるだけ近づけた場合にベストのパフォーマンスを示す「スペースモス」というコケを、数年から10年ぐらいのスパンでつくりたいと思って研究しています。火星の厳しい条件をクリアできると、地球上の厳しい環境をクリアできるコケの発見にもつながると思います。火星を目指すテラフォーミングの研究は、砂漠化など、地球の厳しい環境を克服する研究にもつながります。

コケの研究人口は多くありません。生命現象を分子レベルで解析する分子生物学という領域がありますが、遺伝子の変異を利用してタンパク質を改変し、コケのポテンシャルをさらに高めるという視点の人はあまりいません。 独自の視点で、まだ誰も気づいていない新しいことを見つけられるとワクワクしています。

堀口 ISSでは、スペースモスに関する宇宙実験をされていますね。

藤田 スペースモスと、先ほどお話ししたタンポポミッションの両方をやっています。ISSの中で、人が住む与圧部内での研究と、ISSの外の宇宙空間にコケを曝露する実験をしています。曝露実験は3回目です。

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