自分を肯定する情報だけを正しいと思う人の結末 考えを修正できる人とできない人とで広がる格差
東洋経済オンライン / 2024年8月27日 11時30分
勅使川原:ご著書でも、現代社会に対する処方箋を出されてはいますが、ないよりはましだから書きました、ってただし書きがありますね。そこの潔さが特にかっこいいと思いました。
舟津:その点はすごく悩みました。現代はYouTubeやTikTokに象徴されるように、強い効果音と刺激的なサムネイルで引きつける「アテンション・エコノミー」がますます強まっています。強くてわかりやすい答えが要求される。だから本書でもやはり何らかの「答え」を示す必要はあると思ってはいて、ときに強い言葉を使わないといけない。「三行でまとめてくれ」という人にもこれがポイントだ、とわかるように。
ただ、そうすると「何々が重要という話『しか』書いていない」と受け止められることもある。読者の要望すべてには応えられないのです。だからこそ、ある読者の方に「小さな子どもが見ているYouTubeのように刺激的な映像で伝えるのではなく、丁寧に畳みかけてくる」と言っていただけたのがとても嬉しかったです。
ファストに伝わらない「知の形」のよさ
勅使川原:若者を論じた本って、「今の若者はこう」「だから、こう接するべき」みたいにさっさと結論を出すことが期待されるジャンルだと思うんですよ。逆に、丁寧に畳みかけているという感想は、きちんと読まないと絶対に出てこない。そういうふうにじっくり読んでくれる人がいらっしゃるのは、希望が持てますね。それに、発売から結構時間が経っていると思いますが、いまだに売れている印象です。
舟津:これは本を出してみての気づきなんですが、知り合いの本だとか、自分がものすごく興味があるという本でない限り、買った本っておそらく1カ月ぐらい経ってから読みますよね。4月に出た本をお盆に読んでいる人もたくさんいるはずです。
勅使川原:たしかに。私もそうです。
舟津:もちろん、すぐに読むこともあると思うんですけど、普通はそうじゃない。だとすると、自分の思ったことが詰め込まれた本が他の人に伝わったり、反響が生まれたりするには、実は最低で2、3カ月はかかるんですよね。全然ファストじゃない。でもそれが、あるべき知の形だとも思うんです。
勅使川原:それ、すごくわかります。私の友人におそらく誰もが聞いたことのある商品や企業のキャッチコピーを考えた人がいるんですけど、5秒で言えるコピーを5秒で考えていると思っている人があまりに多すぎるっておっしゃっていました。本来、書くこと・考えることと同じくらい、ないしはそれ以上に読み取るって大変なことなんですよね。
この記事に関連するニュース
-
離島出身・22歳女性が自ら「ホームレス」になることで両親に伝えたかったこと【Z世代ネオホームレスの実態】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月9日 10時15分
-
「だよね」の地位を奪った「それな」の正しい使い方 言語学者が10代娘から学ぶ"謎な日本語"たち
東洋経済オンライン / 2024年12月30日 15時0分
-
流行語が「死語」にならず世代を超えて定着する条件 「真逆」「夜ご飯」もかつては一般的ではなかった
東洋経済オンライン / 2024年12月29日 16時0分
-
「つながる人、思い、物語」『いつかの朔日』 村木 嵐インタビュー
集英社オンライン / 2024年12月22日 10時0分
-
「気づけばクラスで孤立していた」井上咲楽が赤裸々に語る“自己肯定感の低さ”と“生きづらさ”
週刊女性PRIME / 2024年12月21日 11時0分
ランキング
-
11時間半の山越えバスが“タダ”!? 岐阜山間部の2大都市を結ぶ無料シャトルバス運行
乗りものニュース / 2025年1月15日 14時12分
-
2裏切られた気持ちでいっぱいです…月収25万円・65歳サラリーマン、毎年「ねんきん定期便」を必ずチェック、年金月19万円のはずが「初めての年金振込日」に知った衝撃事実に撃沈
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月15日 8時15分
-
3「来週会合で利上げ判断」=米新政権政策、賃上げ注視―植田日銀総裁
時事通信 / 2025年1月15日 16時8分
-
4悪質なデータ復旧事業者「レスキュー商法」の手口 多発する「納得できない作業結果と費用請求」
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時0分
-
5松屋が「本気のガチ中華」で投入した商品の"正体" 「中華一番」の作者も唸る「水煮牛肉」の実力
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時40分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください