自分を肯定する情報だけを正しいと思う人の結末 考えを修正できる人とできない人とで広がる格差
東洋経済オンライン / 2024年8月27日 11時30分
勅使川原:なるほどなあ。ご著書で書かれていた、「楽しい仕事に就くことを目的にするのではなく、楽しさを見つけるように生きることで、われわれは簡単に消費されない楽しさを享受することができる。教育とは、楽しさを発見する過程を支えるためにあるものだ」というところにとても共感したんですけど、今のお話だとかなり難しいことだと感じますね。
学校へ行っても、もしかすると、10歳ぐらいでも自説を強化するために先生のインプットを受けているかもしれない。私の息子も12歳ですけど、いい/悪いをはっきり決める傾向にあるんですよね。親としては、なんとかしたいと思ってしまうんですけど。
舟津:根本的に人にはそういう性質があるんだと思います。たとえば、学歴こそが唯一の価値だと思っている人は、それを肯定する事実に触れるたびに嬉しくなって自己強化していく。でも逆に、明らかにすごいなと思う人が実はあまり学歴のない人だったりしたら、フィードバックが起きて考えを修正する機会がうまれる。少なくとも、学歴は大事だけど絶対ではないね、くらいには思えるようになるはず。それこそが多様性の意味ですよね。
「Aでもあり、Bでもある」を受け入れる難しさ
勅使川原:そうですよね。私は組織コンサルタントをやっているので、「結局、どっちなんですか」みたいな、何かを二項対立的に配置したうえで、唯一解を提示するように求められるような質問をよく受けるんですが、それに通ずるところがありそうです。1つに答えを決めたがる反応がなんでこんなに多いんだろうと思っていたので。ただそれが人間の性だとわかりつつも、性を超えたいですよね。性って超えちゃいけないのかな。
舟津:どっちか選べという2択に帰結していくのは、根深い問題ですね。2という数字がカギでしょうか。アマゾンのピラハ族という部族には、数の数え方が1、2、たくさん、しかない、という論文が2004年に発表されて、話題になったそうです。
勅使川原:エジプトの壁画みたいな話ですけど、面白いですね(笑)。
舟津:そうなんです(笑)。ちなみに2008年に、その研究が間違っていたことが発表されて、実際はピラハ族の言語には正確に数を表す概念がなかったそうです。何が言いたいのかというと、たぶん3から急に認知が複雑になっていくんですよね。専門家に怒られそうな雑な話ですけど、数学でも三次方程式から急に複雑になる。つまり、二元論を超えること、3以上の可能性を考慮することは相当難しいんですよ。
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